「The Esports Observer」が2020年Q2のeスポーツ Tierを発表した。
このデータを元に、新型コロナウイルスの影響で明暗が分かれたゲームの特徴、今後の注目ポイントを特集する。
【最新版】2020年Q3のTierはこちらから!!
【参考】前回(2020年Q1)のTier
情報・分析ソース
情報
- Twitch
- Esports Earning
- The Esports Observer
分析
- The Esports Observer
- newzoo
2020年 Q2のTier・順位
指標
「The Esports Observer」では、以下の6つの指標で重み付けをしてTier(ランキング)を作成している。
- 月間アクティブPCプレイヤー数: 30%
- 賞金額: 25%
- eスポーツ配信の視聴時間: 20%
- ゲーム動画の視聴時間: 15%
- ライブ配信数: 5%
- 大会数: 5%
Tier1
1位 League of Legends
ー
2位 Counter-Strike: Global Offensive
ー
Tier2
3位 VALORANT
NEW
4位 Fortnite
⇧ 5位 ー
5位 Dota 2
⇩ 3位 Tier1
6位 Call of Duty Modern Warfare
ー
7位 Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
⇩ 4位 Tier1
8位 Hearthstone
⇧ 9位 ー
Tier3
9位 PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
⇩ 7位 Tier2
10位 Overwatch
⇧ 13位 ー
11位 Rocket League
⇩ 8位 Tier2
12位 StarCraft II
⇩ 10位 ー
13位 Legends of Runeterra
⇧ ランク外
14位 FIFA20
⇩ 12位 ー
15位 Teamfight Tactics
⇧ ランク外
オンライン化と大会開催数・規模の維持がポイント
Tier1に座す「League of Legends」と「Counter-Strike:Global Offensive」の2タイトルは、「スムーズな大会のオンライン化」と「開催大会数や規模の維持」をクリア出来た。
その一方で、大会のオンライン化には意外にも多くのタイトルが成功したが、「開催大会数や規模の維持」の点で苦戦している。
「Dota 2」「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」「Rocket League」などは、開催数の減少や規模の縮小が大きく響いていることがランキングからも見て分かるだろう。特に世界大会が中止になった影響が大きい。
世界大会が中止となったタイトル
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
世界大会の「PGS」が中止。地域大会の「PCS」に移行。
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
世界大会の「Six August 2020 Major」はオンラインによる地域大会へ変更。
Dota2
世界大会の「EPICENTER Major 2020」が中止。オンライン大会に移行。
Rocket League
「Rocket League Championship Series Season 9 – Finals」が中止。
サーバーとの距離によってラグが発生する点などを考慮すると、一概に「世界大会をオンラインで開けば良い」とも言えない。
また「地域大会の賞金額を増やす」ことで注目を集める手は、地域数が多いとその分嵩んでしまうなど、解決は非常に難しい。
では、Tier1の2タイトルはどの様にこの窮地を脱したのか。
結果的に影響を受けなかっただけのTier1タイトル
Counter-Strike:Global Offensive
「Counter-Strike:Global Offensive」はそもそも欧米といった極めて限定的な地域で人気なタイトルである為、地域大会に変わったところで規模感は変わらなかった。
「Overwatch」がオンライン化に出遅れたにも関わらずランクアップしてる点からも、人気が限定的な地域であるタイトルは大きく影響を受けなかったと考えられる。
逆に、人気が世界的に分散しているタイトルはコロナの影響を大きく受けたということになる。
League of Legends
世界的人気を誇る「League of Legends」は、今なお1位をキープしている。答えは単純だ。大会が各地域で分散してもなお衰えない人気があるからだ。
ただ、それでも懸念点はある。一年の集大成である「The World Championship 」の開催が危ぶまれている点だ。今回開催地である中国(上海)では、国内における国際的スポーツイベントを取りやめているからだ。
有効な対策は見つからず
結局のところ、「限定的な地域で人気があった」「世界的に非常に人気があった」など、新型コロナウィルス以前から持ち合わせていた特徴によって何とかなっているだけなのだ。
大会のオンライン化に対して「開催大会数や規模の維持」を可能にする為の有効な策は未だに見つかっていない。
無双するRiot Games
新型コロナウイルスの影響がモロに出た2020年 Q2だったが、Riot Gamesは強かった。
トップ15タイトル中、
- League of Legends
- VALORANT
- Legends of Runeterra
- Teamfight Tactics
の4タイトルをランクインさせる快進撃を見せた。
恐ろしいぐらいにハマった「VALORANT」の戦略
VALORANTの配信の際に、Riot Gamesが取った策は大きく分けて3つある。
1. Twitchの「キードロップ」と「クローズドβ」を結びつけた
まず、有名ストリーマーに「VALORANT」を限定で配信させる。その配信を見た視聴者はランダムで、限定開放されているβ版のアクセスキーを貰うことが出来るというモノだ。
その結果、早く「VALORANT」をやってみたいという層が配信になだれ込み、視聴者数は鰻登りとなり、圧倒的知名度をクローズドβ版の時点で手にする事となった。
Ubisoftの「Hyper Scape」が同じ手法を取ったように、今どきのオンラインゲームのスタートダッシュには欠かせない戦略となっている。
2. eスポーツとしての展開を早期に行っていた
公式リリース当初から、誰でも使える「カスタムマッチ」機能を搭載していたり、リリースの数週間後に各地域で大規模大会を開催するなど、eスポーツとしての展開をかなり早い段階で行っている。
こうした初動の盛り上がりを活かした動きによって、世界各地で「VARORANT」の大会は高い同時視聴者数を記録している。
3. 強固なチート防止システム
チート発覚からBANまでが非常に早い。
そのためチーターによって荒らされるケースが他タイトルよりも格段に少ない。「Apex Legends」のように、初動の勢いがチーターによって止められ、衰退する悲劇を上手く回避しているのだ。
この3点から分かるように、人気づくりからその維持まで、緻密な戦略が張り巡らされている。
それに加え、新型コロナウイルスによる外出自粛や、後述する「Riot」ブランドが追い風になった。
確立された「Riot」ブランド
多くのeスポーツ関係者が「Riotのタイトルが盛り上がらないはずがない」という期待を抱いていたことが追い風となった。
だからこそ、盛り上がりが確約されていない早い段階でオンライン大会にシフトする決断ができたし、クローズドβ版の時点で多くプロチームがVALORANT部門を新設したのだ。
違った角度で攻めるFortnite
その一方で、ゲームとは別な「何か」へと進化しているのが「Fortnite」だ。
2020年 Q2の期間だけで3つの要素を取り込んだ。
1. ライブ会場
「Travis Scott」や「スティーヴ・アオキ」がゲーム内で音楽イベントを開催した。
2. 映画館
「インセプション」「バットマン・ビギンズ」「プレステージ」といった映画をゲーム内で上映した。
3. ディスカッション
「We The People」という人種差別問題の講演会を開き、プレイヤー間で意見交換する場を作った。
ゲームという枠から飛び出し、価値観の出会いと共有が出来る新たなプラットフォーム的な存在になりつつあるのだ。
今後の注目ポイント
VALORANTは「公式リーグ」のカードをいつ切るか?
「VALORANT」は「公式リーグ」というカードを残している。しかし、このカードを切るタイミングは非常に難しい。
大いに盛り上げるにはオフラインが可能になるタイミングがベストだ。しかし新型コロナ終息を待って先延ばしにすると、人気が下り坂になるタイミングで開催することになる可能性がある。
各地域オンラインの公式リーグが年内に開催される線が濃厚だ。
2020年夏に「Rocket League」が無料に
先日、今夏に「Rocket League」が基本プレイ無料となる発表があった。プレイヤー数が大幅に伸びることは間違いない。
あとは既存の有料版ユーザーをどうケアするかが鍵になりそうだ。
「Apex Legends」は人気のeスポーツタイトルになるのか?
日本で異様な人気を博している「Apex Lgends」だが、最近カスタムマッチが使用出来る企業や個人が増えるなど、eスポーツ化への兆しが見え始めた。
しかし、未だにチーター天国であったり、カスタムマッチモードが微妙(神視点モードがない、非常にマップ画面が見づらい)など、改善点は多々ある。
下半期に予定されている世界大会の動向
「League of Legends」をはじめ多くタイトルが、2020年 Q3~Q4の期間に世界大会を予定している。しかし現時点ではオフライン開催の見通しが立っていない。
新型コロナウイルスの動向が今後のランキングに大きく影響しそうだ。