今回も配信技研のランキングをもとに、11月のゲーム配信市場の動向を詳しく追ってみた。そこから見える傾向と特徴を考察し、最後に今後注目のタイトルを紹介していく。
2020年10月ゲーム配信市場動向
情報ソース
・ランキングの指標は、平均同時接続数ではなく総再生時間。
・ゲーム以外の配信時間は含まれない。
11月ランキング
タイトル
- Apex Legends
- Minecraft
- Among Us
- 桃太郎電鉄~昭和 平成 令和も定番!~
- Shadowverse
- ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険3
- 天穂のサクナヒメ
- フォートナイト
- Dead by Daylight
- ポケットモンスター ソード・シールド
- IdentityV 第五人格
- Phasmophobia
- 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
- PlayerUnknown’s Battlegrounds
- VALORANT
- リーグ・オブ・レジェンド
- 雀魂 -じゃんたま-
- 原神
- 荒野行動
- グランド・セフト・オート V
配信者
- jun channel
- pekora ch. 兎田ぺこら
- fps_shaka
- stylishnoob4
- miko ch. さくらみこ
- kuzuha channel
- kanae channel
- aqua ch. 湊あくあ
- korone ch. 戌神ころね
- kato_junichi0817
- kinako
- watame ch. 角巻わため
- 渋谷ハル
- 兄者弟者
- つるおかかものはし
- flare ch. 不知火フレア
- spygea
- coco ch. 桐生ココ
- subaru ch. 大空スバル
- rushia ch. 潤羽るしあ
タイトルの分析
eスポーツタイトルの視聴時間が大幅減少
9月 | 10月 | 11月 | |
Apex Legends | 1,309,943,930 | 1,162,942,920 | 1,423,768,150 |
フォートナイト | 191,319,110 | 200,155,260 | 166,127,140 |
VALORANT | 127,376,110 | 149,391,570 | 83,441,810 |
リーグ・オブ・レジェンド | 157,612,400 | 183,945,340 | 83,385,830 |
Shadowverse | 117,849,810 | 157,472,200 | 211,100,300 |
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS | 112,355,400 | 73,272,040 | 83,654,170 |
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL | 74,324,610 | 146,957,490 | 96,187,080 |
IdentityV第五人格 | 137,584,110 | 146,937,080 | 121,618,640 |
eスポーツタイトルに限定してみた場合、10月視聴時間が伸びたタイトルほど、11月は大幅な視聴時間の減少が見られる。11~12月は、特に海外のeスポーツタイトルにおいては、公式主催のような大規模大会はあまり行われない。このことが一つ、eスポーツタイトルの視聴率が大幅に落ちた要因として考えられる。
初の公式大会が11月~12月に開かれていたのにも関わらず、大幅に視聴時間を減らしてしまったVALORANTは、少し危険な傾向にあるかもしれない。ただ11月は予選だったので、決勝トーナメントが始まる12月には回復することも大いにあり得る。それでも個人配信数や視聴時間は明らかに減っている。PCタイトルであるためにゲーム自体の広がりが限られること、タクティカルシューティングというジャンルが実際にプレイした経験がないと理解するのが難しいことなどが要因として考えられる。
一方、この期間で視聴時間が大幅に上昇しているApex LegendsやShadowverseは、個々人の配信によるところが大きい。むしろApex Legendsは、純粋なeスポーツとしての大会はあまり見られていない。そのことを考えると、多くの人に見てもらう配信形式としては、日本では大会よりも個人配信の方が有効であると言える。
多くの配信者がプレイしている訳でもなく、大規模国内大会が開かれていた訳でもなく、大規模アップデートも少し時期的にはズレているのに、PUBGが上昇しているのは謎だね。
海外タイトルと日本タイトルの割合
トップ20 | 10月 | 11月 |
海外タイトル | 11個 | 14個 |
日本タイトル | 9個 | 6個 |
トップ10 | 10月 | 11月 |
海外タイトル | 8個 | 5個 |
日本タイトル | 2個 | 5個 |
今回のランキングでは、トップ20における海外タイトルの割合が増えており、一方でトップ10においては日本タイトルの割合が増えている。
日本タイトルは、10月よりも見られるタイトルが絞られ、絞られたタイトルに視聴者が集中していることが読み取れる。特に「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」と「天穂のサクナヒメ」の2タイトルが今回とても影響力が強かった。
和製のパーティーゲームでは、一番と言ってもいいほど知名度が高い「桃鉄シリーズ」の久しぶりの新作であること。また、視聴者数を稼ぎやすいスタイルである大人数で対戦or協力のゲーム配信に打ってつけのタイトルであることから、大手を含めた多くの配信者に遊ばれた。
ただ、対応機種がNintendo Switchのみであること、基本的にゲーム性が単調であること、かなり大型でない限りアップデート要素が少ないこと、の3つの要素によって短期間で消費される可能性が高いことは危惧される。
ストーリーベースのタイトルは、昨今あまり配信受けをしない傾向にある中、アクションRPGである本作は非常にヒットした。日本のSteamの売り上げランキングでは、長い期間1位を維持するなど販売の面でも輝いていた。ヒットの要因は、プレイヤーの想定よりも稲作パートがリアルに近かったことが話題になったからと考えられる。これらの結果を考えると、ストーリーベースのタイトルは新鮮さや斬新さを持ち、それが話題にならないと配信ではあまり伸びないことが分かった。シリーズものやリメイクがあまり伸びないのは、こうしたことが関係していると考えられる。
パブリッシャーであるマーベラスは、昨年のGame of The Yearにノミネートされた「CONTROL」のローカライズ版の販売や、インディーのゲームサークルである「えーでるわいす」が開発した「天穂のサクナヒメ」の販売など、今までとは少し違った路線で成功している。
また世界的にも今年はインディーゲームの方が流行った印象が強い。
売上の維持や上昇を考えると、大手は当たるかも分からない新作を出すよりも、ある程度の顧客を見込めるシリーズものやリメイクに走りがちだからね。
それに対してインディーは、勝負に出なくてはならないから、作られるタイトルに新鮮さと斬新さが感じられる。このことが今年インディーゲームが強かった要因と考えられる。
配信者の分析
10月 | 11月 | |
Vtuber | 12アカウント | 12アカウント |
プロゲーマー | 3アカウント | 3アカウント |
芸能人 | 0アカウント | 0アカウント |
ゲーム会社・公式 | 3アカウント | 0アカウント |
その他(ゲーム実況者) | 2アカウント | 5アカウント |
相変わらずVtuberの勢いは強い。時期的な関係からか、芸能人やゲーム公式の放送がランクインすることは無かった。
Apex Legends or Minecraft
今回トップ20に入った配信者は、先月に引き続き「Apex Legends」と「Minecraft」のどちらかの恩恵を受けている。
10月 | 11月 | |
Apex Legends | 1,162,942920, | 1,423,768,150 |
Minecraft | 901,327,870 | 859,498,550 |
上記の表のように、Apex Legendsは上昇しているのに対して、Minecraftは減少している。Minecraftは特に今後大型なアップデートの予定もなく、大型イベントが開催される予定もないので、12~1月は一端落ち着くように思われる。ただ世界的にも長寿かつ根強いタイトルであるMinecraftやGTA5などは、短期的な盛り上がりが定期的に起こるので、ほぼ確実に来年のどこかのタイミングで盛り上がることが予想される。
一方でApex Legendsは爆発的人気で一気に駆け上がったため、一度盛り上がりが冷め始めると再起は難しいと思われる。ただ現状は、eスポーツや大型イベントも定期的に開催されているので、しばらくは安定していると予想される。
12月~1月にかけてはCrazy Raccoon Cup Apex Legendsが開催され、stylishnoobやSPYGEAなどDeToNatorの面々やEveやSouなどの歌い手界隈の有名人も参加するので、間違いなく盛り上がるだろう。
ゲームではなく、配信者を見に来ている
2020年のゲーム配信市場を見て気づくのは、ゲーム配信においては、配信者自体を視聴者は見に来ていることが多いことだ。個人的な体感ではゲーム動画よりもその傾向は強いように思える。
eスポーツタイトルであれば配信者のゲームの腕を、パーティーゲームであれば配信者のキャラクター性を、ホラーゲームであれば配信者のリアクションをといった配信者が活きる要素が多いほど配信され、視聴されていることが分かる。
このことから、配信するタイトル選びにおいて、安直に新作や往年のヒット作を選んでしまうとドツボに嵌る恐れがあるのだ。傾向から考えるとゲームの面白さを構成する内、プレイヤーに委ねられている部分が大きいゲームほど、配信的には映えると考えられる。
終わりに
2020年のQ4は現状、Among usやPhasmophobiaなどの超新星は、世界的に誕生することは無かった。「Cyberpunk 2077」も非常に話題にはなっているが、配信的にそこまで伸びているかと言われれば微妙である。「見るゲーム」というよりは「やって初めて楽しいゲーム」だと思うからだ。
来年も配信市場は激変すると思うので、都度情報を落としていきたい。
新作がどこまで伸びるのかを見るのも楽しいけど、個人的にはAmong usみたいに、ダイヤモンドの原石を誰が発見するかを見ていきたいな。
筆者注目タイトル
今回は2つのタイトルを紹介していく。
HITMAN 3
まずは、2020年1月20日に販売開始となる、シリーズ最終章である「HITMAN 3」だ。前作、前々作と世界的に人気のタイトルであり期待値も相当高い。ストーリーベースの作品ではあるが、核となるゲーム性である「暗殺」に至るまでの行動の選択肢の自由度は高いため、配信者の色は出やすいと考えられる。
恐らくストーリーを忘れた人も多いと思われるので、販売日に合わせて過去作をやってみるのも面白い試みであると思う。間違いなく大手は既に配信や動画投稿をし終えているので、意外と狙い目かもしれない。
リトルナイトメア2
こちらも人気作である「リトルナイトメア」の続編である。2021年2月10日に発売が予定されている。
こちらもストーリーベースではあるものの、操作もそこまで難しい訳でもなく、スリル満点で配信者のリアクションを引き出しやすい。配信には向いていると考えられる。
ただ最大の難点は、パブリッシャーがバンダイナムコエンターテインメントなので、規約がどのように設定されるか読めないことである。