プロゲーマーの生活や女性プロの現状などを、よしもとゲーミングに所属するぴよねねさんにインタビューを行いました。
はじめに
eスポーツへの関心が徐々に高まっている今、「プロ」という存在がどういったものなのか気になっている人も多いと思います。
今回はそんなプロeスポーツの実像に迫るべく、よしもとゲーミングに所属する女性プロゲーマーの「ぴよねね」さんにインタビューをお願いしました!
インタビューは以下の3点を重視しながら行いました。
- 大手プロチームに所属しているってどういうことなの?
- プロプレイヤーの日常とは?
- 女性プロから見える今のeスポーツ像
ぴよねねさんとは?
所属
よしもとゲーミング
ファイティング・アクション部門所属プロゲーマー
ゲームタイトル
大乱闘スマッシュブラザーズ
愛用ファイターはロボット
出演メディア
よしもとゲーミングが提供するYouTubeスマブラバラエティチャンネル「スマブラハウス」に出演しており、自身の YouTubeチャンネル「ぴよねねはいしん」でもスマブラ中心で配信を行う。
よしもとゲーミング所属のプロゲーマーとは!?
チーム所属で受けられるサポートについて
鮭(筆者):よしもとゲーミングに所属することで、どのようなサポートが受けられるのでしょうか?
ぴよねね(以下、ぴ):よしもとゲーミングに正式に所属する前から 「スマブラハウス」 に出演していたんですけど、私がそこに出演し始めたぐらいの時期にちょうどよしもとゲーミングに所属しないかという話があったんです。
「所属したらよしもとゲーミングチームに所属しているスマブラのプロの方に直接教えてもらうことができて、「スマブラハウス」に毎週出演してもらってスマブラが強い人たちから直接指導してもらえる」という条件だったので所属を決めました。
鮭:「スマブラの指導」が主なサポートということですか?
ぴ:あとはスポンサーさんがついてくださることによって得られる色々な「物」の支援が多いですね。AKRacing(ゲーミングチェアブランド)さんのゲーミングチェアとか、TeamGRAPHTさんからRazer製のデバイスを提供いただいたりだとか。
鮭:ゲーミングチェアはいいですね!僕も欲しいです。
ぴ:他にもよしもとは劇場もあるので、そこでイベントもやってます!イベントをやる機会があるっていうのがよしもとゲーミングの良いところですね。
鮭:過去にどんなイベントをやっていましたか?
ぴ:年末にメンバー間の交流も兼ねた大忘年会の企画がありました!
鮭:よしもとならではの良さを活かしたイベントなんですね。
収入面について
鮭:生々しいお話になってしまうのですが、よしもとゲーミングに所属して収入はいかがですか?
ぴ:それは人によってさまざまなのですが、私の場合は「スマブラハウス」の出演料と個人のYouTube収益ですね。
鮭:ゲーム関連の収益の中で一番稼げるのは何だと思いますか?
ぴ:分からないです。私の場合、一番は配信の収益ですね。
鮭:今後は配信中心で活動される予定でしょうか?
ぴ:今のところはそうですね。
メディアの露出の方が収入はいいんですけど、配信をすることでそれに繋がると思うので…。
チームに所属して良かったと思うこと
鮭:チームに所属して良かったと思うことは何でしょうか?
ぴ:スマブラ界隈ってみんな既に友達同士で固まっているので、新規勢がすごい入りづらかったんです。
そんな中、スマブラを通じて強い方に私を知ってもらうことができ、質問したらすぐにアドバイスをもらえたところですね。
鮭:実際に直接会って指導してもらうことはありますか?
ぴ:対戦会で知っている人を見かけたら、こちらから話しかけて対戦してもらったりとかはありますね。
鮭:よしもとゲーミング用の施設や部屋はありますか?
ぴ:「ゲーミングハウス」っていう、よしもとゲーミングに所属している人たちが自由に出入りできる、モニターとかがいっぱいあってゲームの設備が整った場所があります!
鮭:それはいい環境ですね!
ところで、やはり最近は大会の開催数は少なくなっているのでしょうか?
ぴ:めちゃめちゃ少ないですね。今やっと緊急事態宣言が明けて、これからやっていきたいなという感じですね。
鮭:オンラインでもあまり大会は無いのでしょうか?
ぴ:大会自体はたくさんあるんですけど、公式の大会は少ない印象ですね。
プロゲーマーとして気を遣っていること
鮭:プロゲーマーとして一番気を遣っていることはなんですか?
ぴ:暴言を吐かないことです。
鮭:私だったらすぐ暴言出ちゃうと思います(笑)
他には何か気を付けているところはありますか?
ぴ:毎日更新をサボらないことですかね。
鮭:そこが一番大変ですよね!
ぴ:でも好きなことだから全然やれます!
プロゲーマーの日常
練習時間について
鮭:練習はどのぐらいしていますか?
ぴ:休みの日は全然12時間とかやってます。
鮭:12時間…!ほぼノンストップですか?
ぴ:そうですね、ご飯食べる時以外はずーっとです。
鮭:身体は痛くなりませんか?
ぴ:なりますなります!
眼が一番やばいですね。集中するとまばたきしないんですよ。眼も乾くし。
あと、終わった後に頭が痛くなってくるんです!
鮭:練習12時間できるのはすごいですね!飽きたりしませんか?
ぴ:断トツで強くなったりしない限りは飽きないと思います。
鮭:まだ成長の余地があるということですね!素晴らしいです。
昼夜逆転している?
鮭:配信者は夜に長時間配信するのが主流だと思うのですが、ぴよねねさんは昼夜逆転していますか?
ぴ:してます。
鮭:具体的にはどんな生活になってしまっていますか?
ぴ:アルバイトが無い日は昼に起きて、少しスマブラしてからご飯食べて、夕方ぐらいから配信始めて、夜中までずっとしてます!夜の方が配信見てくれる人が多いので。
ゲーム一本で生活できる?
鮭:ゲーム一本で食べていけていますか?
ぴ:いや、バイトしてます。
プロゲーマーというだけで食べていける人は全然いないと思いますね。スマブラ自体も賞金が出るゲームではないので。
鮭:全く出ないのですか?海外の大会でも?
ぴ:海外の大会のことはよくわかりません!
鮭:スマブラの超上位者でもゲーム一本で食べていくのは難しいのでしょうか?
ぴ:安定はしないんじゃないですかね~?
鮭:収入が安定しないことで不安はありますか?
ぴ:不安があったらとっくにやめてますね!
自分の好きなことをやって、それだけでは食べていけないからバイトもどっちも両立して、最低限の生活ができたら幸せかなという感じです。
鮭:いいですね!自分の好きなことができるってうらやましいなと思います。
ところでスマブラは全体的に仕事が少ないのでしょうか?
ぴ:全くないです。
他のプロの方とかも「え?普段お仕事何してるの?」という感じで…(笑)
鮭:やっぱり任天堂はお堅いからということなのでしょうか…。
ぴ:そうですね。でもeスポーツの番組に出てる人もいますし、雑誌などでインタビューされている人もいます。ゲームのイベントでは今のコロナの環境ではお仕事はないですね。
鮭:大会配信も基本ダメなのですか?
ぴ:配信自体はしても大丈夫です!
女性プロゲーマーとは?
プロゲーマーを目指したきっかけ
鮭:プロゲーマーを目指そうと思ったきっかけは何ですか?
ぴ:最初はプロを目指そうという気は無かったです!
たまたまスマブラしてる友達が「大会に行ってみないか」って誘ってくれて、それで参加してみようと思いました。元々大会に行くことに対して全く抵抗はなかったんです。
鮭:そうなんですか!?すごいですね!
ぴ:私が小さい頃にお父さんが遊戯王のカードを集めるのが好きで、かなりの数を集めてたんですよ!もう「全種類そろえるまで買う!」ぐらいのコレクターで(笑)
私自身遊戯王に対してそんなに興味なかったんですけど、アレって攻撃力と防御力の足し算引き算じゃないですか。
私が6歳ぐらいのときにお父さんが、遊戯王の対戦を通して私に足し算引き算の練習をさせたかったらしく、なんと子供たちがいっぱいいる遊戯王の対戦会に連れて行かれたんですよ!そこで大会に出たりしていたのでそんなに抵抗はなかったです!
鮭:本当に大会に対して抵抗がなかったんですね。
ぴ:それでスマブラの大会に行ってみて、初めて対戦してもらったのが実はRAINさん(よしもとゲーミングに所属するスマブラのプロゲーマー)なんですよ。
鮭:え?!対戦相手としては強すぎじゃないですか(笑)
ぴ:自分から話しかけられなくて、一緒に来た友達は他の人たちと対戦してたから、一人で携帯いじってたんですけど、その時にRAINさんが「対戦しますか?」って話しかけてくれて。それ以降、吉本ゲーミングに所属しないかとお話しを頂きました。
鮭:それでプロを目指すようになったのですね。
ちなみにスマブラを始めたきっかけは何ですか?
ぴ:就活のストレス発散のために始めました!(笑)
プロゲーマーを続けるためのモチベーションとは?
鮭:プロとして活動されているわけですが、活動するモチベーションはどのように保っていますか?
ぴ:やっぱり「自分より強い人がいる」っていうのが一番のモチベーションですね。
強い人たち同士が対戦してても負ける人は負けるじゃないですか。そういう対戦を見たり、SNSで強い人を見かけたりすると「また頑張ろう」って思います。「自分よりも強いのにまださらに上があるのか~」って。
鮭:自分よりも実力が上の人が頑張る姿に触発されてという感じなのですね。モチベーションはなかなか続かないと思うのですごいと思います。
家族や周囲の人々の反応は?
鮭:家族や友達など周囲の方は、プロゲーマーとしてのぴよねねさんをどのように受け止めているのでしょうか?
ぴ:お母さんは「自分の好きなことやりなさい」って感じなんですよ。でもお父さんはせっかく私が大学院まで進学したのになんじゃ!という感じなので、心配はされてますね。
鮭:反対はされてないのですね。
ぴ:はい、それはされてないです。
でも普通に就職して欲しかったみたいですね…。でもゲーム好きになったのはお父さんの影響なんだけどなあって思いますけどね(笑)
鮭:お友達はどう受け止めていますか?
ぴ:ちょっと変な目で見られてますね(笑)
鮭: 受け入れられているという感じですか?
ぴ:いや、中学・高校からの友達は私のこと変な人だと思ってるんで(笑)
それから、昔は元々芸人になりたかったんですよ。それでプロゲーマーという形でよしもとに入ってるからすごいねって(笑)
鮭:確かにそうですね!
ぴ:大学・大学院の友達は、私真面目に勉強してたから「急にどうしたんだ?!」ってなってると思います(笑)
女性プレイヤーとして感じること
鮭:女性プレイヤーだからこそゲームに対して思うことはありますか?
ぴ:やっぱり女性は男性よりも弱いという扱いが普通っていうところと、男性より対戦ゲームで一緒に戦える人口が女性だと限られてくるというところですかね。
あと個人的に思うのが、女性はホルモンバランスが乱れる時期が定期的にあるので、勝てるときとそのせいで勝てないときがあるんですよ。スマブラもイライラしてると勝てないので、体調面で男女で差があると思ってます。
鮭:そういう視点もあるのですね。もしかしたら女性でゲームになじみのある人が少ないということかもしれませんね…。
ぴ:女性プレイヤーの母数が少ないっていうのもあると思います。
今後のeスポーツやゲーム文化について
鮭:最後の質問ですが、今後のeスポーツやゲーム文化はどうあってほしいですか?
ぴ:今の状況が落ち着いたら海外から日本にいっぱい人が来て欲しいですね。
それから海外の大会にも日本人がたくさん活躍して欲しいです。国内ももっともっとたくさん大きな大会が開かれたらいいなと思います!
鮭:以前は海外の選手が来日して戦っていたのでしょうか?スマブラはアメリカがけっこう強いと思うのですが。
ぴ:2年前(2019年)の5月に千人規模の大会があったんですけど、その時に2人来てましたね。でも2人なのでもっとたくさん来て欲しいです!全然代々木体育館とかでやりたいです!(笑)
鮭:大会の他には何かありますか?
ぴ:ゲーム好きな人自体はいっぱいいると思うので、もっとプロの人たちが活躍できる舞台が増えればいいかなと思いますね。プロゲーマーになりたいと思う子供たちも増えて欲しいです。
YouTuberになりたい子は今時けっこういると思うんですけど、プロゲーマーになりたいって子はあんまりいないと思うんですよ。「プロゲーマーになって何がすごいの?」って感じだと思うので。
鮭:確かに日本ではあまり聞かないですね。もっとお金が稼げるようになれば良いのでしょうか…?
ぴ:プロ野球選手とかってお金持ちのイメージじゃないですか。プロゲーマーもそうなったら、なりたいと思う子供も増えるかもしれないですね。
あとは、はっきりしたプロゲーマーの定義が無いのもそれに影響してますね。ランクがそこそこ上がってもプロじゃないとかもありますし。
鮭:定義されたら逆にプロじゃなくなっちゃう人も出てきそうですよね。でもその方がプロとしての価値が確立して良いのかもしれないですね。
最後に一言
鮭:最後に何か言っておきたいことはありますか?
ぴ:仕事ください!(笑)
鮭:その辺りは善処させていただきます(笑)
インタビューに答えていただき、ありがとうございました!
ぴ:ありがとうございました!