最近耳にする「eスポーツ」。
それって一体「どんな仕事」で「どんな業界」なのだろうか。
今回はeスポーツ業界に存在している「職業」と「eスポーツ業界の現状」を現実も踏まえながら紹介していこうと思う。
はじめに
2019年「ソニー生命」の調査では、中学生のなりたい職業ランキングで「プロeスポーツプレイヤー」が2位となった。
また、別の調査でも「スポーツ選手」の内訳にeスポーツが確認されている。
更に「Fortnite world cup 2019」では、16歳の少年Bugha選手が優勝し、約3億2600万円獲得したことも大きな話題を呼んだ。
そんな「eスポーツ業界」には他にどの様な職業があるのだろうか?もちろんプロプレイヤーだけで成り立っている訳ではない。
今回はeスポーツ業界に存在している「職業」と「eスポーツ業界の現状」を現実も踏まえながら紹介していこうと思う。
ぜひとも「就活」や「夢を育む」為に活用して欲しい。
プロプレイヤー
概要
「ゲームの上手さで飯を食う人たちのことだ。」
ただし、チーム競技の場合、そこに対人関係を円滑にする力を求められるので、どんなにゲームが上手くても人格破綻者には向かない。
収入源
- 所属チームの給料
- 出演料(イベントや講演など)
- 案件
- メディア収入(広告収入、サブスク、投げ銭)
- 賞金(タイトルによって大きく変化する)
- プライベートコーチング
現状の課題
稼ぐことは非常に難しい・・・
「プロプレイヤー」の数は徐々に増えてきている。
現状、プロプレイヤーやプロチームは星の数ほど存在している。
だが、名実ともに「プロ」なのは選りすぐりの極一部だ。
そんな極少数の「プロ」ですらゲームだけで生活できるかと言えば、微妙なラインだ。(最近は徐々に改善されつつある。)
更に厳選されたトッププレイヤーはどうだろうか?
確かに人並みよりは少し稼いでいるだろう。
だが、残りの人生をそのお金で逃げ切れる程稼ぐことはほとんど不可能だ。
体を壊す可能性もある
練習時間がリアルスポーツと比べても長い。
また収入を増やすためには、他にも配信、案件、講演、プライベートコーチングなどに時間を割く必要もある。
「座ってゲームをやり続ける」というそれだけだが、眼、腰、手首、肘など想像以上に負荷をかけるのだ。
この負荷が原因で、選手生命が脅かされる者、日常生活に影響が出る者などが現れる。
その後のキャリアは・・・・
コーチ、アナリスト、キャスター、ストリーマーなどの選択肢は、ゲーム以外に優れた要素が求められ、尚且つ門が狭い。
現状、元eスポーツプレイヤーの肩書が活きる職業があまりないので、キャリアチェンジを求められることも多い。
ストリーマー(配信者)
概要
主にゲームを使った配信により、メディア収入(広告収入、サブスク、投げ銭)や案件収入などで生計を立てる仕事。
一発当てれば、プロゲーマーよりも稼げるのは明白。
だが成功するには、ゲームが上手いだけでは不可能だ。愛されるキャラクター性を持っていること、魅力的なトークやリアクションをすることができることも必要だ。
正直、戦略よりも「運」や「素質」が占める要素の方が多い様に感じる。
また、人気の移り変わりも早い。如何に固定ファンを多くつけられるかが勝負所。
日本と世界の違い
日本と世界では少し形が変わる。
日本のゲーム配信は「ニコニコ動画」で急速に流行ったゲーム実況の流れを受けて、現在のキャラクター性とトーク重視のスタイルが確立されている。
世界も日本同様にキャラクター性やトークやリアクションも大いに求められるが、最大の違いは「プレイで魅せる」ことも求められる。その為、ある程度の腕は必要だ。
日本の配信スタイル
- ゲームの腕 :並み~一般人よりは得意
- 配信スタイル :自身のキャラクターとトークが売り
- 所属 :YouTuber事務所・個人
世界の配信スタイル
- ゲームの腕 :セミプロ~元プロ
- 配信スタイル :自身のキャラクターと魅せるプレイ
- 所属 :プロチーム・個人
「DETONATOR」は世界よりの配信スタイルでありながら、日本で成功している数少ないプロチームだ。
現状の課題
長時間配信が再生数、視聴者数、登録者数を伸ばすための一つの解になっている点だ。
長時間の固定された姿勢は体のあちこちに支障をきたし、配信のパフォーマンスを上げる為にエナジードリンクや酒の暴飲、手軽に食べられる物ばかりを摂取してしまう為に暴食、当然しゃべり続ければ喉の酷使にも繋がる。
間違いなく身体を壊す。
実況解説
概要
リアルスポーツと同様に観戦の盛り上げには欠かせない存在だ。試合の様相を言葉に熱を込め、視聴者に伝える仕事である。
観客にはヘビー層とライト層が存在しているので、どちらも楽しめるようなワードチョイスは非常に難しい。
また実況するにおいては、タイトルをかなりプレイしないと中々話せない。あまりプレイしない状態で実況すると地獄絵図と化す。
更に盛り上げるのに適した声質というのもあるので、天性の素質も一定の割合で必要。
活動範囲
実況:タイトルの敷居を跨いで活躍する。
解説:基本的には、自分に知識がある1タイトル
入口が非常に狭い
元アナウンサー勢などの「話すことを職にしていた勢」と「ゲーム叩き上げ勢」の二分している。特に実況に関しては、新しい人を見ることは少ない。
解説は、基本的にそのタイトルで一線を走っていた元プロ選手が担当することが多い。
コーチ
概要
プロプレイヤーが最大限のパフォーマンスを発揮できる様にサポートをする仕事。
チームをまとめて士気を上げられる力、最新の環境に適応した戦略が立てられる力、何よりコミュニケーション能力が大事。
多くは担当タイトルのプロ経験者であるが、そうでない場合も存在する。
しかし、いずれにしろ、少なくともタイトルを熟知している必要がある。
アナリスト
概要
プロチームが有利に戦える様に、タイトルに関する情報収集を行い、その結果に基づいて戦略を立てる仕事。
あまり目立たない仕事ではあるものの、チームの盛衰に大きく影響を与える。
強いチームほどこの部分に力を入れる。
チーム運営
概要
所属する選手やストリーマーの管理と自チームのブランド力の上昇に勤める仕事だ。
大手ですら利益を得るのは難しい。
スポンサー収入が収益の大部分となっているeスポーツ業界では、如何にスポンサーをつけるかが重要だ。
つまり、より良い広告塔であることが求められる。その為にブランド力は必須なのだ。
eスポーツチームがブランド力を強めるには、一般的に「強いこと」と「人を集められること」が求められる。
だが、「強さ」と「集客力」にはお金がかかる。給料(より良い選手やストリーマーを引き抜くにはなおさら必要)はもちろん、ゲーム環境や配信環境も整える必要があるのだ。
鶏と卵の問題が存在している。
大会運営・企画
概要
eスポーツ大会の企画、会場作り、配信を支える裏方的な役割。
その詳細は多岐に渡る。大会の構成、選手や実況解説のキャスティング、スポンサーとの兼ね合い、会場作り、諸々の契約や同意書の作成、配信画面の構成、配信のカメラワーク等々、軽く挙げてもこの様に多岐に渡っている。
会場や選手は勿論、配信でのコメントなどの民度の維持は非常に難しい。
この分野も収益化は難しい。スポンサー費がほとんどであり、観戦チケット代やグッズ販売や投げ銭では厳しいものがある。故に小~中規模大会では収益を回収しづらい。
そして大企業も果たして黒字なのかは非常に微妙な所である。
大規模大会を主催する大手企業
CyberZ/エイベックス・エンタテインメント/テレビ朝日
日本で最も多くのeスポーツ大会を開催している「RAGE」。
DMM GAMES
eスポーツ大会において最も高い完成度を誇る「PUBG JAPAN SERIES」。
テレビ東京/電通
日本最大規模の高校生eスポーツ大会「STAGE:0」。
施設運営
概要
eスポーツに触れる機会を増やす為、eスポーツに関心がある人が集う為の場所を作り、運営する仕事。
体験施設
「REDEE」が日本では最大規模のeスポーツ体験施設だ。観戦、ゲーミングPC&配信体験が出来る。2020年3月オープンであった為にコロナウイルスによって大きく出鼻を挫かれた。
eスポーツカフェ
現状コロナウイルスの影響を一番受けている。営業を再開したところも多いが、消えていった場所も多い。特にeスポーツカフェはダメージを受けた。
基本的にはeスポーツカフェはゲームプレイをされる場所として使われることが多いが、その場合「ネットカフェでよくない?」の難問に苦戦している。差別化が求められる。
eスポーツ協会
概要
eスポーツのイベントを開催することで各地域を盛り上げようとしているのが、eスポーツ協会だ。
現状収益化が難しく、本職で生計が立てられる人達がボランティアとしてeスポーツ協会の運営を行っているパターンがほとんどだ。
日本eスポーツ連合(JeSU)
概要
日本のeスポーツを推進することを目的に作られた組織である。ネックとなっている法律問題のクリアの為に政府に掛け合ったり、大会開催初心者の為のガイドなども作っている。
ただ首脳陣が日本のゲーム会社の重鎮が多い為か日本産タイトルに偏っており、海外産タイトルでプロライセンスが発行されているのは「レインボーシックス・シージ」だけである。それで本当のeスポーツの繁栄が日本で起こるのかは非常に疑問である。筆者個人としてはeスポーツのガラパゴス化を引き起こしかねないと思っている。
タイトル運営
概要
eスポーツタイトルを作る仕事である。
ゲームの面白さを作るのは勿論のこと、収益システム、アップデートなどでのゲーム内バランス調整、チートや迷惑行為対策なども行う。
課題点
世界規模のeスポーツタイトルは、日本では「格闘ゲーム」しかない。
eスポーツの収益が確立されていない日本では、eスポーツを念頭においたタイトルの開発に乗り気ではない。
1年前、日本大手ゲーム会社の現場の人に聞いた時、「売れるタイトルがeスポーツになるのであって、初めからeスポーツを狙って作ることはしない」と言っていた。
その結果、日本独自のeスポーツタイトルは、対戦機能で無理にeスポーツ化を名乗ることになっている。
もしeスポーツタイトルの開発や運営に携わりたいならば、海外の会社に行くしかない。
世界最大のeスポーツタイトルである「League of Legends」の開発をした「Riot Games」は、完全にeスポーツを想定したFPSタイトル「VALORANT」を最近リリースした。
世界では既に有名なタイトルを一つ保持している会社でも、積極的にeスポーツタイトルの開発に取り組んでいる。
eスポーツ専門学校
概要
プロゲーマーやストリーマーを目指す学生に練習環境、ノウハウ、プロの講演などを提供する仕事である。
極一部はプロになる生徒(在学中からプロであった)がいるが、ほとんどの卒業生の進路は不透明である。その為、どの程度生徒の将来の役に立っているのかは不明。
この現状の中、どの様に生徒の「就職」に結び付けられる教育を施すことが出来るかが課題となっている。
eスポーツの夢を追う若者の金を貪るような組織になって欲しくないと心から願っている。
eスポーツライター
概要
eスポーツの現状、課題、将来を様々な角度で、関係者から一般の人へ「文章」を通じて伝えていく仕事である。eスポーツの「認知」には欠かせない仕事だ。
主戦場はインターネットである。大手ゲーム関連サイトからブログ、note、SNSなど多岐に渡る。最近ホットなのは「note」。
入りとしては、「ブログ」や「note」などが手軽である。
課題
課題としては「情報の質」である。
ビュー数狙いの「釣り」の様な中身の無いモノが存在したり、「eスポーツ」を良く見せたいがために良くない部分には目を瞑っている節もある。
1メディア的側面を持つ、我々「神奈川県eスポーツ協会」はありのままの「eスポーツ」と向き合っていく記事の作成を心掛けていきたい。
ゲームデバイス(メーカー)
概要
基本的にはゲーミング環境のデバイスを開発・販売する会社ではあるが、eスポーツの大会の企画、大会やチームへのスポンサーになるなど多岐に渡ってeスポーツに関わりを持っている。
eスポーツへの資金投下という意味では一番貢献している。
eスポーツ業界の現状
世界では成長産業と言われているが、日本では、ほぼ赤字なのだ。
成長を夢見て、情熱だけで走っている部分が多い。
その理由は、「収益化システムの不完全さ」と「認知度の低さ(eスポーツの単語知っているかではなく、その中身に触れたことがあるか)」にある。
現状の主な収益源は「スポンサー費」と「グッズなどの物販」である。
しかし「認知度の低さ」故にスポンサー側の広告としての旨味も少なく、大型の投資には躊躇している。また、「認知度の低さ」はブランド力の成長も妨げる原因となっている。
そんな現状の打破の為、「新たな収益システムの形成」と「認知度の向上」が求められる。
eスポーツ業界が求めている人材
マーケティング能力・コンサルティング能力
ゲームに精通していることは勿論だが、「収益」の問題に行き詰っている今、「コンサルティング」や「マーケティング」の経験者やその視点で考えられる人材が求められる。
事実、求人サイトのeスポーツに関する募集要項には、「マーケティング会社」や「コンサルティング会社」での経験を重視する文面が目立つ。
発信力
また「認知」という点を改善する為には、「eスポーツ」の面白さを発信できる人材も必要だ。それは「文章」でも「動画」でも構わない。
「eスポーツ」に多くの人が触れたいと思える様な「発信力」が求められる。
語学力
- メジャータイトルが基本的に海外タイトルであること(使用許諾などの交渉)
- 海外の方がビジネスとして最先端であること(情報収集や学び)
- 海外チームとのコンタクトで必要であること(情報共有やスクリムや大会の参加・招待など)
「交渉」「学び」「交流」といった点で語学力が必要であることが分かる。求人サイトでも語学力を求める会社が多い。
大会運営経験
eスポーツのメインイベントは「大会」である為、実際の大会運営経験がある人も業界からはかなり求められる。
終わりに
「eスポーツってどんな業界なのだろう?」「eスポーツにはどんな仕事があるんだろう?」
という疑問を少しでも解消出来たなら幸いだ。
もし更に興味を持ったなら、「観戦」や「タイトルのプレイ」をしてみて欲しい。