正式リリースから1か月が経った今、「VALORANT」はどうなったのだろうか?流行っているのだろうか?人気なのだろうか?
今回はプレイや視聴の観点から、ゲームとesportsとしての「VALORANT」の現状を客観的な視点で考察したい。
はじめに
世界一の盛り上がりを見せるesportsタイトル「League of Legends」を手掛けた「Riot Games」の最新FPSタイトルが「VALORANT」である。
リリース以前から期待度はかなり高く、公式のプレイムービーが出た段階で選手を募集するプロチームも見受けられた程だ。
β版リリース時点では、Twitch史上最高同時視聴者数を記録した。この要因の一つにキードロップ制があり、その有用性が明らかになった。続く新イベントや新作もキードロップを多用している。
6月2日のリリース後にして、すぐにesports大会の開催を世界各地で連発!!
それから1か月が経った現在、「VALORANT」って実際どうなの?面白いの?未来はあるの?と疑問を持つ人も多くいるはずだ。
今回はプレイや視聴の観点から、ゲームとesportsとしての「VALORANT」の現状を客観的な視点で考察したい。
プレイして感じること
魅力
戦略性
非常に簡単に言うと指定されたエリアに爆弾を設置できるか、阻止できるかというゲームだ。
そんなこのタイトルでは「マップの制圧」が重要になってくる。「どこを制圧するのか」「どのタイミングなのか」「相手が対応できない内にゴリ押すのか」「ラウンドごとにアプローチは変えた方がいいのか」「人数の割き方これでいいのか」などなど、その駆け引きは戦略性に溢れ、プレイヤーを引き込んでいくモノが確かにある。
カスタムマッチが便利
「カスタムマッチ機能」が一般的に使えるか否かは、esportsとしてのタイトルの成長には欠かせないと感じている。手軽な大会の開催や簡単に練習試合が出来る環境は、シーンを盛り上げることに繋がるからだ。
「VALORANT」のカスタムマッチは非常にシンプルな作りだが、対戦以外でもマップ把握などでも使えるのが良い。
優れた射撃場
上記のTweetの様に「#企業公式BOT撃ち」というタグで、多くの企業がBOT撃ちのスコアを競い合っていた。
本来ならば、黙々とエイム練習に耽る「練習場」でも楽しめるのは革新的であった。スコアが出ることで競い合いが出来ること、自分の上達が目に見えるなど、上達意欲を掻き立てる。デザインもスタイリッシュであり、個人的には「VALORANT」のゲーム要素の中では一番魅力を感じている。
チーターを絶対に許さない姿勢
数々のタイトルの人気を撃ち落としてきた「チート行為」。その点でも「Riot Games」は抜かりなく、堅牢なチート防御システムを実装した。結果人気タイトルのリリース当初には珍しい程にチーターの数は少なかった。
しかし、先日誤BANをしてしまった。対応は速い、即刻解除と謝罪文が載せられた。誤BANが日常茶飯事のPUBG界隈を知っている者には少し衝撃だった。
バグなどの不具合への対応も速い。対応の速さは素晴らしいのだが、小さな不具合が多発している点はもうちょっと何とかした方がいいのではないか。
それでも快適なプレイに対するハイレベルな意識は感じる。
気になる点
1マッチのプレイ時間
「VALORANT」には、簡単に言うと、長期決戦の「アンレート&コンペティティブ」と短期決戦の「スパイクラッシュ」の二つのゲームモードが存在している。
厳密にいえば、ゲーム性も異なるが今回は省略する。
主流となっているのは、「アンレート&コンペティティブ」の方であり、13ラウンド先取で勝利となる。このモードは公式目安30~40分となっているが、拮抗した展開の場合は1マッチ当たり1時間近くかかる。(基本的に30分で終わることはない。)
プレイするに当たって1マッチだけでは流石に味気ないと感じるので、結局2~3マッチやることを想定すると、プレイ前には2~3時間近く時間を割く必要がある。大抵の人は意識せずに時間を浪費するモノだが、2~3時間使うと覚悟して時間を割くのは少し勇気がいる。ましてや社会人となると少し難しい。
とは言えスパイクラッシュでは少し物足りない、そんなジレンマに陥っている。結局私個人としては別のゲームをやっていることが多い。
なので、二つのゲームモードの中間のラウンド数にして欲しい。
スキンが非常に微妙
他タイトルと比べてもデザイン的にはかなり良い物が多いが、購入する気は湧いてこない。
まずは値段だ。上記の画像を見て欲しい。武器スキンのセットが割引入って約5,500円だ。割引が入ってこれである。個人的には同じ金額の余裕があるのならば、間違いなくゲームを購入しているだろう。高いと感じるのは私だけだろうか。
二つ目は、戦闘中しかカスタマイズしたスキンを見られないことだ。他タイトルはロビーでの待機中、勝利した時、TPS視点などプレイヤーがスキンを見る・見せる機会が多い。また「VALORANT」はFPSのため戦闘中もスキンの全体像を見る機会はない。正直、これではあまり買いたいとは思えないのではないだろうか?
大会の盛り上がり
RAGE × VALORANT
6月2日リリースで、6月20日に大規模公認の大会を行える当たり、「VALORANT」のesportsへの意識の高さが伺える。主催は日本esportsイベント最大手の「RAGE」である。やはり、サイバーエージェントも抜け目ない。
そんな最速にして最大のesports大会はやはり注目を集めた。配信プラットフォームは「Twitch」と「OPENREC」の二つ。つまり日本では最大規模の「YouTube」なしの状態だ。そんな中でも最高同時視聴者数約4万を記録した。
なんと8月には、日本では最大規模の賞金総額500万のオープン大会が開催される予定だ。
各タイトルのレジェンドが集う
日本だけではなく、世界でもそうだが、リリース前後で各タイトルのプロ選手が「VALORANT」を新天地として定めている旨を公表している。ゲーム性が似ている「CS:GO」をはじめ、「PUBG」、「OverWatch」、「Fortnite」、「DOTA2」など多様なタイトルから移行してきているプレイヤーが多い。その衝撃も「VALORANT」が初動で注目された要因であろう。
上記の「Absolute JUPITER」は元CS:GOの選手で構成されており、RAGEの大会では圧倒的な強さを見せつけた。余談だが、JUPITERのスタジャンをユニフォームにする発想はいつ見ても感心させられる。
懸念点
大会配信
我々プレイヤーが見ると多少楽しめるだろうが、間違いなくVAROLANTに馴染みが無い人は楽しむことが出来ないだろう。
プレイ経験が無いと分からない戦略要素が多いのも間違いないが、同じ系統のレインボーシックス・シージは未プレイ時でもかなり楽しめたことを考えると、キャラクターデザイン、ゲーム内演出がデフォルメされ過ぎていることも原因に感じる。
あとは日本チームが世界で活躍する機会が増えれば、更に盛り上がると思う。事実、レインボーシックス・シージは野良連合が世界ベスト4に入ってから視聴者数が増えた。情勢的に難しくはあるが、世界大会に繋がる公式リーグが全世界で展開されることが求められる。
配信の盛り上がり
上記データは完成版リリース前の5月のモノである。だが、日本でVALORANTの配信が最も行われていたのはベータ版であったこの時期だ。日本Twitch配信者二大巨頭の「stylishnoob」と「SHAKA」も、この時期以降は「VALORANT」をあまり配信しておらず、ほとんど「Apex Legends」だ。事実「Apex Legends」の方が人も集まっていたので、数字だけ見れば正解だろう。日本人はバトルロワイアルの方が好きなのかもしれない。
そして現在は「VALORANT」を配信している個人はかなり減っている。
正直私個人としても、大会を除いた「VALORANT」の配信を見ることは少ない。何故なら、見ていると途中で「自分もやりたいな」という気持ちが溢れてゲーム起動しているからだ。
つまり、「見て楽しい」というよりは「やって楽しい」タイトルなのかもしれない。
一方で海外配信者は多く人を集めている。それでも4月の全盛期と比べたらかなり減っているのだが。
日本での盛り上がり
限定的な盛り上がり
間違いなく盛り上がりが限定的だ。配信と言う形で発信する人も少なく、熱心にプレイしているプロ選手も多くが「mildom」というかなりニッチなサイトで配信していることが一つの要因だろう。
そして致命的なのは、断固としてコンソール対応はしない「Riot Games」の方針からか、「VALORANT」はPCのみだという点だ。コンソール人口の方が圧倒的に多い日本では、PCだけだと新たな層の獲得が難しい。
我々はもっとPCでゲームをする文化を広めていく必要があるのだろう。
「人気」ではなく「期待」
はっきり言うと今のesports界隈は過剰に「VALORANT」を持ち上げている。
よく考えて欲しい。今までのビッグイベント、人の流入、同時視聴者数、これらは正式リリースされる直前直後に起きたことだ。
つまり実際に遊び続けたり、観戦し続けて楽しかったという「人気」ではないのだ。「League of Legends」という世界一のesportsを保持する「Riot Games」の新作だから間違いないだろうという「期待」の結果なのだ。
確かに面白いタイトルであることは間違いないが、当初の「期待」を満たせるかと言ったら微妙だ。このギャップを埋める努力を「Riot Games」と「esports」の双方で行わないと急速に萎んでいくだろう。