今回は世界のゲーム会社の売上ランキングとMicrosoftによるActivision Blizzardの買収の影響の2点について触れます。
【YouTube】[2020-2021年]世界のゲーム会社売上ランキング! MicrosoftによるActivision Blizzard買収の影響は!?
はじめに
2022年1月18日、MicrosoftによるActivision Blizzardの買収が報じられました。
この買収によって「Microsoftが世界3位のゲーム会社になった」とも言われています。
この世界3位というのはゲーム市場における「売上」の順位です。今回の買収は上位のランキングを大きく変動させました。
そこで今回は、世界のゲーム会社の売上ランキングの詳細とこの買収から見えることの2点を中心に、現在のゲーム会社の勢力のパワーバランスを紹介します。
売上ランキングの詳細
まずは売上ランキングの詳細を説明します。
各会社のゲーム市場におけるシェアを測るために使用されます。
為替相場や決算時期の違いによって、厳密な順位とは多少異なります。ある程度の参考として考えていただければ幸いです。
算出の基準
- 決算書は2020年度のものを使用。
※6月末が締めの場合は、2019年7月1日~2020年6月30日のものを使用 - ゲーム事業以外でも収益を上げている会社の場合、その収益を極力除外して考える。
ex.)ソニー、Tencentなど - 為替相場は期の最終日のものを使用。
ex.)円⇔ドル、円⇔人民元、ドル⇔人民元 - 非上場企業は含めない。
ex.)Epic Games、Valve Corporation - 今回はAppleとGoogleは除外
- 決算書の書き方の違いにより、厳密には違いがあるが、ここでは売上と収益は同一をして考える。
ex.)日本企業:売上、海外企業:収益、純収益
第1位 ソニー (ゲーム事業のみ)
2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)のソニーのゲーム事業における売上は2兆6563億円でした。2019年度と比べると34%上昇しています。
2021年度は、半導体不足の影響なども関係してか、ハード製造のコストがかなりかかっていますが、現状の見通しでは、今期も売上は上昇すると見込まれています。
2位のTencentとの差は額面よりも小さく、人民元と円のレートが少し変化すればひっくり返るほどの僅差です。
売上に関していえば、ソニーとTencentが頭一つ抜けています。
第2位 Tencent
2020年度(2020年1月1日~12月31日)のTencentのゲーム事業における売上は、1561億人民元でした。締め日の12月31日の人民元と円のレートは1人民元=15.9円でしたので、売上は約2兆4820億円とします。2019年度と比べると36%上昇しています。
上記にも記述したように、ソニーとの差は人民元と円のレートが少し変化すればひっくり返る程の僅差です。
このように勢いのあったTencentですが、ここ最近は中国政府によるゲーム規制の影響を大きく受け、減益となっています。
第3位 任天堂
2020年度(2020年4月1日~3月31日)の任天堂のゲーム事業における売上は1兆7589億円でした。2019年度と比べると34.4%上昇しています。Nintendo Switchなどハードは前年度よりも約40%も売れていました。
2021年度は、昨年の「どうぶつの森」以上に当たった作品がないことや半導体不足の影響でハードを想定よりも売ることができなかったことから、微増もしくは減収と考えられます。
第4位 Microsoft
2020年度(2019年7月1日~2020年6月30日)のMicrosoftの売上は、約1兆2492億円(1ドル=107.92円) でした。2019年度と比べると2%上昇しています。
因みに2020年7月1日~2021年6月30日のMicrosoftの売上は、約1兆7067億円(1ドル=111.04円)です。2021年度と2020年度を比べると32%上昇しています。
そして、今回のActivisionBlizzardの買収の結果、単純な足し算だと任天堂の売上を上回ったとされています。直近のQ2の決算も昨年と比較しても上昇傾向にあります。
第5位 NetEase Games
2020年度(2020年1月1日~2020年12月31日)のNetEase Gamesのゲーム事業の売上は、約8640億円(1人民元=15.822円) でした。2019年度と比べると約18%上昇しています。
こちらも中国でのゲーム規制の影響を強く受けており、中国国内から国外へとリソースや市場を移し始めています。
第6位 Activision Blizzard
2020年度(2020年1月1日~2020年12月31日)のActivision Blizzardのゲーム事業の売上は、約8348億円(1ドル=103.24円) でした。2019年度と比べると約27%上昇しています。
2020年度も2021年度も売上という観点では順調でした。しかし、数年に渡ってセクハラ問題を抱えており、株価を下げる要因となっていました。
最終的に、2022年1月18日、Microsoftによって約7.8兆円で買収されました。
社内体制が良化することを願っています。
第7位 Electronic Arts
2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)のElectronic Artsのゲーム事業の売上は、約6231億円(1ドル=110.7円) でした。2019年度と比べると約2%上昇に留まっています。2021年度は14%以上の上昇が見込めるようです。
Apex Legendsの人気の再燃が上昇には大きくかかわっているようです。アクティブプレイヤー数は30%増加しています。
第8位 Take-Two Interactive
2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)のTake-Two Interactiveのゲーム事業の売上は、約3419億円(1ドル=110.7円) でした。2019年度と比べると約16%上昇しています。
2021年度もQ3時点で売上の増加が見込めます。
第9位 バンダイナムコエンターテインメント
2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)のバンダイナムコエンターテインメントのゲーム事業の売上は、約3380億円でした。2019年度と比べると約3%上昇しています。
2021年のQ3時点では、前年と比べると売上は微減となっています。
第10位 Ubisoft
2020年度(2020年1月1日~2021年12月31日)のUbisoftのゲーム事業の売上は、約2296億円(1ドル=103.24円) でした。2019年度と比べると約40%上昇しています。
2021年のQ3時点では、前年と比べると売上は微減となっています。
この後は僅差でセガサミーが続いています。
非上場であり、情報が公開されていないEpic GamesやValve Corporationもトップ10に入る程の売上を出していると言われています。
まとめ
上記で紹介した2020年度のデータと2021年度のデータ(2022年2月現在)の特徴を簡単にまとめました。
2020年の特徴
- コロナ禍による巣ごもりの影響でゲーム市場全体で売上が大幅上昇。
- ソニーとTencentの売上が頭一つ抜けており、任天堂とMicrosoftがそれを追う形になっている。
- 自社でハード機器を販売している企業が上位になっている。
2021年の特徴
- 中国政府によるゲーム規制の影響を受け、中国の大手企業は売上の上昇が鈍化している。
- 4位のMicrosoftは6位Activision Blizzardを買収したことで、3位の任天堂を上回る。
- 半導体不足の影響でハード機器の売上が足踏み状態。
- 2020年程ではないが、2021年度も多くの企業は上昇傾向にある。特に欧米の企業はその傾向が強い。
Activision Blizzard買収の件
最後にMicrosoftによるActivision Blizzardの買収の件について触れます。
買収の理由
買収の理由に関しては様々な記事が、現在ネット上で掲載されていますが、結局のところMicrosoft側の真意を知ることは難しいです。
個人的な意見としては、メタバースの進歩というよりは、XBOX GAME PASSのラインナップやモバイルゲームの技術の拡充の方が目的として現実的だと思います。
メタバースは曖昧なまま話題性だけが先行しているような気がします。
多くの人が想像するような大規模なモノは、現在の技術力では相当難しいと感じます。メタバースはまた別の記事で特集したいです。
ハラスメントと買収
Activision Blizzardは世界的にも大きな企業であったのにも関わらず、Microsoftに買収されるに至りました。
買収に至ったきっかけとして最も有力なのは、当時Activision Blizzardのハラスメント問題が大きくなり、株価が大幅に値下がりしたことです。
実際にゲーム市場は体制が古いところが多く、ハラスメントが問題になることが度々あります。
今回の件で大手であっても、ハラスメントなどの社内体制に問題があると買収される可能性があるということが分かりました。これを機に多くのゲーム関連企業が自社の体制を見直すようになるといいですね。
逆に隠蔽体質に磨きがかからないことを祈ります。
終わりに
世界的ゲーム会社の売上を中心に、MicrosoftによるActivision Blizzardの買収について触れていきました。今回の内容でゲーム市場の規模感などはある程度理解していただけたと思います。
こうした最大手によるゲーム会社の買収は、最大手であるソニー、Tencent、Microsoftを中心に近年盛んになっています。
そこで次回は「どのようなゲームがどのような資金の流れを汲む会社によって開発販売されているか」を買収情報をはじめとする各ゲーム会社の組織情報を元に簡単に紹介します。