今回は、Twitch上でのアメリカ軍による悪質な「釣り行為」による募兵について触れながら、アメリカ軍とeスポーツの関わりとその狙いについて特集する。
アメリカ軍とeスポーツ
アメリカの陸・海・空軍は、2018年頃から積極的にeスポーツに参入している。
陸軍
- 独自のeスポーツチーム「U.S. Army Esports」を持っている。
- 陸軍が「Chicago Huntsmen」「Complexity Gaming」などのスポンサーになっている。
- 陸軍州兵が大手eスポーツチーム「NRG」などのスポンサーになっている。
- 「Twitch Rivals」のスポンサーである。
- 空軍と共に2020年の「Call of Duty League」のスポンサーである。
海軍
- 独自のeスポーツチーム「Goats & Glory」を持っている。
- 「EvilGeniuses」のスポンサーとなっている。
- 「ESL North America」、「Dreamhack」とのパートナーシップ締結している。
空軍
- 陸軍と共に2020年の「Call of Duty League」のスポンサーである。
- eスポーツ関連企業最大手の「ESL」ともパートナーシップを締結
アメリカ軍は広告や募兵の場としてeスポーツに目を付けていることが分かる。
さらに「Twitch」や「アメリカのeスポーツ業界」には、アメリカ軍のお金が流れていることにも注目だ。
アメリカ軍が起こした騒動
アメリカ軍を批判する発言は即コメント禁止
2020年7月、アメリカ軍に所属するeスポーツタレントが配信において、アメリカ軍を批判する発言は即コメント禁止という対応をした。
▼海軍
▼陸軍でも
2019年に連邦裁判所は、ドナルド=トランプ大統領がTwitter上で彼を批判した人をブロックすることは認められないと判断した。
以降、プラットフォームが人々の自由なコメントを許可している状況で、政府機関や軍がプラットフォーム内のアカウントを運営している場合、パブリックフォーラムの扱いとなり、コメントの削除やブロックは言論の自由の侵害にあたることになった。
よって今回のアメリカ軍のコメント禁止は物議を醸している。上記のTwitterは多少挑発的なのでどうかとは思うが・・・。
悪質な「釣り行為」による陸軍の募兵
▼非常に詳細な記事で、今回の釣り行為が明るみとなる発端となった。ぜひ読んでみてほしい
陸軍のTwitchチャンネルにおいて、配信中のチャット欄に「Xbox Elite Series 2のコントローラーをプレゼント」という内容とリンクが繰り返し投稿された。
しかしリンク先には、抽選概要、オッズ、総当選者数、開催時期などの詳細は一切なく、求人ページに飛ばされるだけだった。
当事者(陸軍や支援されたチーム)はこの件に対し、終始口をつぐんだままだ。
「Twitch」は長らくこの件に関して黙ったままだったが、先日、軍に対して削除要請を出した。
詐欺と言っても過言ではないレベルの話である。これを国家機関がやっているのは非常に問題だ。
軍の狙いは若い兵士の獲得
海軍のeスポーツ戦略の記事を参考に考えてみよう。
海軍はアメリカの一大イベントである「スーパーボウル」などのテレビ広告から撤退し、広告予算をYouTubeやeスポーツなどのデジタルコンテンツに割く方針を示している。
理由はターゲット層の17歳~28歳に求人広告を見てもらうためだ。データによるとeスポーツの視聴者の61%は25歳未満なので、彼らの需要に非常にマッチしている。
また、陸軍による「釣り行為」も低年齢層に向けて発信していることから、ゲームを通じて「若い兵士」の獲得を狙っていることが分かる。
終わりに
こうした行為はゲームと現実の境界線を曖昧にする。プレイヤーの意思に関わらずだ。
こんな状況下でプレイヤーはゲームをエンターテイメントとして純粋に楽しむことは出来るのだろうか。