なかなか知ることの出来ないesportsの「大会事情」や「JeSUの実状」や「収益の実態」。
盛んに活動されている「岩手eスポーツ協会」さんにインタビューし疑問をぶつけてみた!
はじめに
今、esportsに求められているのは、その存在が「一般的になる」ことである。
一般的にならなくては、「盛り上がり」も「イメージ」もなかなか上がらないからだ。
では、esportsが一般的になるにはどうすればいいか?
大会開催が重要
私は、多くの「大会」が開催されることであると考える。
多く開催されることによって「大会」が身近なモノになれば、新たにesportsの世界を覗きに来る人々がきっと増えるからだ。
このように「知ってもらい」、「参加してもらう」ことが「一般的になる」為には必要である。
大会開催の実態がなかなか見えない
しかし一つ問題がある。
「大会」ってどう開けばいいの? 「大会開催」の難易度ってどんなものなの?
意外と不透明な部分が多いのだ。
この点を払拭すべく、岩手県盛岡市に向かった。
岩手eスポーツ協会とは?
我々の目的地は、そう「岩手eスポーツ協会」だ!!
▼esportsラッピングされた自動販売機がお出迎えしてくれた。因みに全国初らしい。
では一体「岩手eスポーツ協会」とはどんな存在なのだろうか?
ここでは簡単に!!
- 多くの大会を定期的に開催している。「YOROZU CUP」、「いわてeSportsパーク in イオンモール盛岡南店」、「G019サミット in APPI」など
- 日本eスポーツ連合(JeSU)の岩手支部に認定
いざ、インタビュー!!
岩手eスポーツ協会代表の遠藤徹也さんにお話を伺った!!
テーマ
- これまでの歩み
- JeSUってぶっちゃけどうなの?
- 大会&イベントについて(運営の声、実状)
- スタッフ&スポンサーについて
- 代表が考える「esportsの課題」
- 今後の挑戦
以下、テーマに沿って質問していく!!!(インタビューアーは私「鮭」です)
これまでの歩み
esportsDOGA(以下「DOGA」):
岩手eスポーツ協会を立ち上げた経緯を教えてください。
遠藤代表(以下「代表」):
2018年9月頃東京に行った時に「esports」の活動を知りました。岩手県でも「esports」が盛り上がれば面白そうだなと思い、年内中にアクションを起こそうという運びになったんです。
当時は本当に何も無かったので、まずはゲーム機を買うところから始まりました。萬屋さんに行ったのですが、そこには既にesportsコーナーがあったんです。しかし当時は今よりも認知度が低く、あまり使われていませんでした。esports盛り上げる為にも「一緒に何かやれたらいいな」という萬屋さんの声もあって、最初の大会を2018年の12月31日に萬屋さんのesportsコーナーで開くことになりました。
▼萬屋さん
協会の設立に関しては、ゲームのイベント事に詳しい人に相談した結果、団体を立ち上げてみたらどうだろうかと言われ、「岩手esports協会」を設立するに至りました。
最初はSNS(Facebook、Instagram、Twitter)を立ち上げるところから始めました。すぐに新聞社に取材され、その記事が広まって12月31日の大会ではテレビ局の取材が入りました。実はこの時期が「JeSUの地方支部設立」と「全国国体esportsの詳細発表」の時期と重なっていてメディアの熱も凄かったんです。ラッキーだったのかもしれませんね。
JeSUってぶっちゃけどうなの?
DOGA:
どのような経緯でJeSUに入ることにしたのですか?
代表:
現状「協会」は名乗った者勝ちですので誰でもなれます。岩手県での協会としての地位を確立する為に、JeSU公認という後ろ盾が欲しかったからですね。
DOGA:
選考基準みたいなものはあるのですか?
代表:
入るには実績が必要です。オンライン面談での選考もあります。そこで重要視されるのは
- 同様の活動をしている複数の団体がないこと
- 定期的な活動実績があること
- イベントなどを正しく運営していること
です。
DOGA:
JeSUに入る前と入った後で変わったことはありますか?
代表:
一般的にはタイトルの使用許諾が取りやすくなります。(特にJeSU傘下のタイトル)
実はこの使用許諾を取る為、メーカーの担当者に辿り着くのが意外と難しいんです。esports専用の受付がありませんからね。
またJeSUの会議には企業も参加しているので、参加すればそういった企業との繋がりが持てるのもいいかもしれません。
大会&イベント
YOROZU CUP
2018年12月から毎月「萬屋盛岡店」で開催。タイトルは「ウイニングイレブン」と「Street Fighter V」。
DOGA:
「YOROZU CUP」の規模感について教えてください。
代表:
第2回からは、埼玉など全国から参加者が来ました。プロや実力者もちらほら参加するようになりました。
DOGA:
では今も規模は拡大しているんですね?
代表:
ある程度回数を重ねていくごとに落ち着いてきました。恐らく少し上手いレベルの人がガチ勢の強さに気づたからでしょう。
DOGA:
年齢層はどういった感じですか?
代表:
10~40 代と幅は広いです。20代が一番多い印象です。
DOGA:
景品はどのようなものを用意していますか?
代表:
賞金はゲームタイトルのメーカーさんからNGが出ているので、 県の特産品や商品券にしています。
いわてeSportsパーク in イオンモール盛岡南店
イオンモール盛岡南店にてオフライン大会と全国国体の種目(ウイニングイレブン、グランツーリスモ、ぷよぷよ)の体験会を開催
DOGA:
「いわてeSportsパーク in イオンモール盛岡南店」はどういった経緯で開催されることになったのでしょうか?
代表:
この件はイオンさんからオファーがあったんです。
当時は国体が控えていた時期で、「岩手では誰も出場しないんじゃないか?」という不安があったので、国体を自分たちで宣伝することにしました。
その一環でポスターを各地で貼らせてもらっていた時、イオンでも貼っていたら、イオンの人に興味を持ってもらって「ぜひうちでもイベントを開催してくれ」と言われたことがきっかけです。
DOGA:
第2回は新型コロナの影響でオフライン大会が開催できなくなってしまいましたが、オンライン大会で最終的に開催されました。どうして延期や中止ではなくオンライン大会開催に踏み切ったのですか?
代表:
一番は楽しみにしてくださっていた参加者のためにオンラインにしてでも開催したかったからです。
2つ目はオンライン大会を開催したかったからです。今まではオフライン大会の経験しかありませんでしたから。
DOGA:
苦労した点はありましたか?
代表:
今回が初めてだったので・・・。エントリーシステムに問題があってスムーズに開始できなかったり、動画配信のコメント欄が荒れたりと、本当に色々ありましたね。
また、フォートナイトのカスタムマッチは、Epicが開催する大会以外は神視点が使えないので多少見ごたえに欠けるものがありました。
反省点を次回に活かしたいです。
G019サミット in APPI
さまざまなゲームタイトルのコミュニティが集まり、持ち寄りの「大会・交流会」を行うというコンセプト。規模はなんと300人程!
DOGA:
「G019サミット in APPI」を開催した経緯を教えてください。
代表:
1つは東京で行われている「C4LAN」がとても盛況だったので、岩手でもやってみたいという思いがあったことです。
もう1つの狙いは、岩手に潜在するコミュニティがどのくらいいるのか、各ゲームタイトルがそれぞれどのくらい人気なのか、を知りたかったことです。
DOGA:
印象的だった出来事を教えてください。
代表:
「フォートナイト」が印象的でした。多くのタイトルは中心層が20代でしたが、「フォートナイト」は小学生が多かったんです。当然小学生は一人では来られないので、家族連れが多くなります。結果的に集客力の上昇に繋がりました。
DOGA:
何か工夫した点はありますか?
代表:
ゲームをしているプレイヤーは勿論ゲームを楽しめます。しかし見ている家族などは、どうしても飽きてしまいます。彼らも楽しませたいという思いから、ゲーム以外の部分(コスプレやマッサージなど)にも力を入れました。
DOGA:
これほど大規模なイベントですので、回線の整備は大変だったのではないですか?
代表:
国体の岩手予選で「NTT東日本」と仲良くなったので、その繋がりで回線工事を行うことができました。
スタッフ&スポンサー
DOGA:
岩手eスポーツ協会には多数のスポンサーがついていますが、どのようにして現在の関係になったのでしょうか?
代表:
大会を見て協力してくれる方がほとんどで、彼らはとても好意的です。広告などの利益を狙っているという訳ではなく、善意と好意と熱意で支援してもらっています。
DOGA:
スタッフはどのように集められましたか?
代表:
彼らは皆ボランティアです。「ストリートファイターV」の実況解説は参加者の方にお願いしています。
DOGA:
それは意外でした。スタッフはもちろん参加者も情熱と当事者意識を持っているということですね。
代表が考える「esportsの課題」
DOGA:
代表が考える「esportsの課題」とは何でしょう?
代表:
1つは認知度が低いことですね。多くの人が言葉は知っていますが、実態は知られていません。そのため一歩を踏み出せないんです。これは継続的な活動で解決していきたいと考えています。
2つ目は「ゲーム」のイメージが悪いことです。ゲームを正しく知ってほしいです。確かにやりすぎるのは良くありませんが、ゲームを通じた職業が生まれている今、悪いとは言えないはずです。このイメージは払拭したいですね。
もっとメディア露出が増えれば変わると思いますが、もう少し見た目もカッコ良く露出されると良いですね。ファンを増やすためにも、スポーツ=活発、ゲーム=根暗というイメージを払拭したいです。
3つ目は収益化が難しいことです。今の法律では収益を得る方法は限られてしまうので、どうしても費用がかさんでしまいます。収益のほとんどがスポンサー頼みですので、新たな収益方法が見つからないと厳しいです。現状は熱意だけで走っている状況です。
いくら熱意があっても、長期的に考えれば、お金がないと続けていけないのが正直なところです。
今後の挑戦
DOGA:
代表を突き動かすモチベーションを教えてください。
代表:
たぶん岩手が大好きなんですよね。でも岩手って意外と何もないんですよ。だからesportsを通じて岩手県を盛り上げたいって思いがあるんです。
DOGA:
最後に今後のヴィジョンを教えてください。
代表:
岩手をeスポーツの聖地にしたいですね。そして今よりもっと大規模に「岩手らしさ」×「esports」のようなオリジナリティーがあるイベントを作っていきたいです。
インタビューを終えて
「esportsへの熱量」が、利害を超えた「広く強い繋がり」を引き寄せる。その最たるモノが岩手eスポーツ協会さんにはあった。
こうした思いを無駄にしない為にも、我々はイメージや収益など現実的な問題に取り組まなくてはならない。