今回は配信技研より発表された、2020年版日本国内のeスポーツのTierから見えた日本のeスポーツの特徴を2019年版と比較しながら紹介する。
【YouTube投稿】日本のeスポーツ視聴時間ランキング!! 日本で人気のタイトルはなんだ?
【参考】前回(2019年)のTier
情報・分析ソース
指標
対象
- 期間:2020年1月1日 – 12月31日
- 対象:日本国内で開催されたゲームの競技的大会
※競技性を重視しているので、招待制のエキシビションマッチは含まれない
例:VTuber最協決定戦など - 単位:ライブ配信の視聴時間合計 [分]
※ライブ配信の視聴時間のみカウント(アーカイブは含まない)
各Tierの境界線
- Tier1 : 1億分以上
- Tier2 : 3000万分以上
- Tier3 : 1000万分以上
※2019年版と比べると、Tier2が1000万分、Tier3が500万分引き上げられている。
Tier1
League of Legends
ー
Shadowverse
⇧Tier2
VALORANT
NEW
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
ー
IdentityV 第五人格
⇧Tier3
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
―
Tier2
Apex Legends
NEW
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
⇩Tier1
ストリートファイターV
ー
PUBG Mobile
NEW
荒野行動
ー
Tier3
スプラトゥーン2
⇩Tier2
グランブルーファンタジー ヴァーサス
NEW
プロ野球スピリッツA
NEW
モンストスタジアム
⇩Tier1
鉄拳7
⇩Tier2
Tier 一覧
体感的に盛り上がっていたのはTier2までかな
特徴
今回のTier表を2019年のものと比較しながら、ゲームジャンル、モバイルタイトル、ガラパゴス化の3点で特徴をまとめた。
ゲームジャンル
バトルロワイヤル 16中4タイトル
- PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
- Apex Legends
- PUBG Mobile
- 荒野行動
原案が日本の小説だからなのだろうか、日本人とバトルロワイヤルの相性は非常にいいようだ。PUBGから始まり、Fortnite、2020年はApex Legendsの空前絶後のバズなど、ここ数年人気ジャンルのトップクラスに常に位置している。
なかでも評価したいのはPUBG(PC版)である。ゲーム自体の人気全盛期からは勢いが衰えているのにも関わらず、日本国内のTier1に位置しているからだ。それだけ2020年までの日本国内リーグであるPJSが多くの関心を集めていたということだろう。しかしながら、2021年からは日本リーグの立ち位置や運営も少し変わってくるので維持できるかは微妙だ。また、今回のTier表に直接的な関係はないが、日本のPUBG eスポーツ視聴者は日本チームも参戦しているのにも関わらず、国際大会を視聴している人が少ないことは違和感がある。スポーツではワールドカップやオリンピックなど国際戦の方が注目される傾向にあることを考えると非常に疑問である。
一方でPUBG Mobileはアジア圏で急速に人気を拡大している。特に日本ではPCゲームよりもモバイルゲームの方が浸透していることを考えると今後伸びる可能性が高い。またPUBG Mobileのプレイヤー層には今までゲームとは縁遠かった人も多く含まれるので、日本のゲーム文化としてもいい刺激になりそうだ。2021年2月にはNTT主催の賞金総額3億円の大会が開かれる。
Apex Legendsは2020年4月に日本では最大のブームが起こり、1年間ゲーム配信でトップの座に君臨し続けた。配信技研の記事でも触れられているが、現状大会開催に必要なカスタムマッチ機能が一般化されていないので、eスポーツとしては今後の広がりは少し期待できない。
国内人気も高く2019年ではTier3にランクインしていたFortniteだが、2020年は外れている。以下のような要因が考えられる。
- 公式大会の運営に日本が入っていない
- 配信技研の考える”競技”に当てはまっている大会が少なかった
- 大会が乱立し過ぎて視聴者が分散し過ぎてしまっている
タクティカルシューティング 16中2タイトル
- VALORANT
- Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
日本でタクティカルシューティングは流行らないと長い間言われていたが、Rainbow Six Siegeのeスポーツとしての安定感とVALORANTへの期待感によって、距離はだいぶ縮まったように感じる。しかし、システムが他のジャンルよりも複雑なので、全く知らない人が観戦するのは難しいという点がある。
格闘ゲーム 16中4タイトル
- 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
- ストリートファイターV
- 鉄拳7
- グランブルーファンタジー ヴァーサス
オフラインがメインとなる格闘ゲームはコロナショックの影響を大きく受けた。それでもオンラインへの移行がスムーズだった「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」や「ストリートファイターV」などは高位をキープしている。コロナウイルスが蔓延する前にEVO JAPANを行えたこともプラスに働いている。
「グランブルーファンタジー ヴァーサス」は初のランクイン。RAGEなどの事業を手掛けるサイバーエージェントの子会社であるCygamesがパブリッシャーであるため、eスポーツへの動きが積極的である。
格闘ゲームは日本人が世界で結果を残しているジャンルであることや基本的に個人戦なのでプレイヤーに注目が行きやすいことによって固定ファンが非常に多い。
モバイルタイトル躍進
- Shadowverse
- IdentityV 第五人格
- PUBG Mobile
- 荒野行動
- プロ野球スピリッツA
- モンストスタジアム
今回ランクインしている上記6つのモバイルタイトルのほとんどが、初ランクインや昨年よりもTierが上昇した結果になった。上記でも触れたが日本ではPCでゲームをする文化があまりない。加えてガラケーからスマートフォンへの過渡期にソシャゲやカジュアルなゲームが流行った以降は、PS4などの据置機ではなくスマートフォンやタブレットで手軽にゲームに触れる層が増えた。その影響でモバイルタイトルがeスポーツでも力を付けてきている。特にIdentityV 第五人格、PUBG Mobile、荒野行動など中国産ゲームは、スマートフォン向けでありながら高いゲーム性で人気があります。
ただTier1では6タイトル中4タイトル、Tier2でも5タイトル中3タイトルがハードやPC対応のタイトルであることを考えると、主流はまだそちら側であると言える。
もしかしたら純粋にモバイルゲームが人気というよりは、単純にゲームとの接点がモバイルしかないとも考えられるね。ゲーミングPCもゲーム機も高いからね。
ガラパゴス化が更に進行
2019年の限定的な地域で人気のタイトル 6/18タイトル
- Shadowverse
- IdentityV 第五人格
- 荒野行動
- スプラトゥーン2
- モンストスタジアム
- ぷよぷよeスポーツ
2020年の限定的な地域で人気のタイトル 7/16タイトル
- Shadowverse
- IdentityV 第五人格
- 荒野行動
- スプラトゥーン2
- グランブルーファンタジー ヴァーサス
- プロ野球スピリッツA
- モンストスタジアム
2019年ではCall of Duty、CS:GO、Hearthstone、Fortnite、CLASH ROYALEなど、世界では人気のタイトルもランクインしていた。しかし2020年ではその姿は消え、日本と隣接した国でのみ盛り上がっているタイトルが力を付けている。上記のリストを見ても分かるように、ノミネート数が減ったのにも関わらず、限定的な地域で人気のタイトルが増えたことから、日本のeスポーツのガラパゴス化は進んだと言える。
だが、最も注目すべきはそれらのタイトルがどこに位置しているかである。Tier2では1タイトル、Tier1では2タイトルと、ほとんどがTier3なのだ。結局、人気の原動力となる活気はプレイヤー数に依存するので、限定的な地域でのみ人気のタイトルよりは世界的に人気のタイトルの方が強い。そのように考えるとShadowverse、IdentityV 第五人格、荒野行動などよっぽど国内で広いシェアを持っていない限り、Tier2から上に食い込むのは難しいと言える。
終わりに
日本のeスポーツが未来に対して広がりを持つ方向に進んでくれることを願うよ。