eスポーツの中でも近年存在感を増しつつあるスマホゲームのイベントについて、デジタルカードゲームを例として運営する上でのポイントやノウハウをご紹介します。
初めに
弊社はこれまでに3度、スマホで遊べるデジタルカードゲームのイベントを開催してきました。企画・運営する中で、コンシューマーゲームやPCゲームを使ったイベントとはまた違った難しさがあることが分かってきました。
本記事では、スマホゲームのイベントを開催する中で集まったノウハウをご紹介していきたいと思います。同じようにイベントを開催しようとしている方だけでなく、イベントを依頼したいがどんなことをやっているのか分からない、といった方々にも読んでいただけると嬉しいです。
開催形式
弊社では以下の形式で開催しました。
- オフライン開催
- 午前・午後の2部制で、各部の中で総当たり戦を行い、各勝者で決勝戦を行う形式
- 参加人数にもよるものの、3~6人を1グループとしてまとめて、3~4グループでそれぞれ総当たり戦を行い、最も勝ち数の多いプレイヤーは決勝戦に進む
- 決勝戦では各ブロックの勝者をトーナメント形式で配置し、それぞれBO3(Best Of 3の略称。先に2回勝った方の勝利)形式の対戦を行って勝者を決め、順位を決める。
- 決勝戦の対戦模様は観戦用スクリーンに出力し、会場の他の参加者に向けて実況・解説をする。
機材
イベントを開催するにあたって、会場のレイアウトや機材準備は欠かせません。
コンシューマー機器やPCの場合、オフラインイベントだと参加者に機材を持ち込んでもらうのは難しく、運営側で機材をそろえる必要があります。しかし、スマホゲームの場合、既にプレイしている人向けのイベントであればスマホ持ち込みで参加してもらうことができるため、その分の機材を用意することなく準備ができます。
試合を観戦できるようにする場合の映像機材
ここは我々が運営するにあたって苦労した点の一つでもあります。参加者によってスマホの機種が異なり、スマホ本体の性能や挿さるケーブルの違いに対応するため、いくつか方法を準備しておく必要がありました。
3度の開催を経て、以下のような方法で対応するのがよいという方針になりました(各図は映像出力に関わる配線のみ記載しています)。
Lightning端子のiPhone
Lightning端子とHDMIの変換器を使用して、選手スマホの映像を各方面に出力する。


Type-CのiPhone
Type-CとHDMIの変換器を使用して、選手スマホの映像を各方面に出力する。


Android
選手スマホの映像をChromecastに飛ばし、各方面に出力する(Chromecastとスマホは同じWi-Fiに接続している必要がある)。


(どの接続方法にも「選手用モニター」が登場していますが、映像面では本来は必要ありません。元々Chromecastの端末情報を選手に共有するために使用しており、こちらも資料を事前に作成しておけば問題ないということになったのですが、後述する音声問題の解決のために活用することになりました。)
うまくいかない場合
- イベント運営用Discordサーバーを作成し、参加者にサーバーに参加してもらう。
- OBS用PCに入っているDiscordのユーザーと同じボイスチャットルームに入ってもらい、スマホの画面を配信してもらう。
- 配信画面をOBSに取り込む。
機種によって機材が異なるため、多くの状況に対応できるようにしておくことが大切ですが、なるべく事前に参加者を募集する段階で機種を聞いておくとよいでしょう。
決勝戦の選手用音声機材
スクリーンに映る情報が上記のように両者の対戦画面である場合、観戦用モニターが見えてしまうと対戦相手の手札が見えてしまい、実況や観戦者の声が届くと相手の戦略がわかってしまいます。つまり、以下のような注意が必要です。
- 試合場所と観戦場所は分ける必要がある
- 実況や観戦者の声が聞こえないようにする工夫が必要
弊社では別室に対戦部屋の準備をし、そちらで対戦を行ってもらっていました。といっても、すぐ隣の半個室の部屋のため、遮音性には課題がありました。
そのため、イヤホンとイヤーマフを選手に装着してもらうことで対策しました。競技者用モニターに繋いだイヤホンをつけた後、上からイヤーマフを付けることでゲーム音を聞いてもらいつつ観戦部屋の実況の声や観戦者のリアクションが聞こえない状態にすることができ、ある程度開けた会場でも音声を遮断することができます。
一度目の開催では導入していなかったのですが、実況の声が聞こえてしまうという課題点が出てきたため、二度目の開催から改善策として導入しました。選手からも好評で、盛り上がる実況と支障なく試合を行える設備の両立において、音声問題への対応は必須ということが分かりました。防音個室があればそれだけでも対策になりますが、ない場合はこういったものがあるとよいでしょう。

イヤーマフのみでは遮音性に不安があり、かといって2重に装着することによる違和感の懸念はありましたが、選手へのヒアリング結果は好評でした。
観戦面の工夫
オープニングやエンディングでは、基本的には事前に準備した資料や動画を映すなどして進行していくことが多いと思います。その点では他のesportsイベントと変わりはありませんが、ゲーム画面をスクリーンに映すとなると気にしておかなければならない点があります。スマホゲームのゲーム画面は縦長か横長のため、レイアウトを工夫する必要があります。
スクリーンの見せ方の工夫
横長の画面であれば、コンシューマーゲームやPCゲームと同じようなオーバーレイで見せていくことは可能ですが、縦長の画面の場合工夫が必要になります。
弊社がスマホのデジタルカードゲームのイベントを行った際には、以下の点に気を付けていました。
- カードゲームの場合、観戦者は両者の手札を見られる状態がよいため、2つの画面全体をなるべく映したい
- スマホゲームはタイトルによって縦画面の場合があり、残りのスペースも縦長になるので、どう埋めるか
こちらも3度の開催を経て、中央に対戦する2名のゲーム画面を映し、残りのスペースには両名のデッキとプレイヤー名を表示し、なるべく空白がないようなレイアウトにブラッシュアップしました。
ゲーム画面はもちろん、手札とデッキ全体が分かると観戦者や実況にとっても展開予想がしやすく、盛り上がります。

(2本先取で勝利するルールの時は勝った回数をプレイヤー名の横に配置するなど、必要に応じて情報を追加するとなおよいです。)
終わりに
eスポーツイベントの運営経験があるとはいえ、スマホゲームでのイベント経験はなく、特に初回開催は事前準備に時間をかけ、探り探りの開催となりました。
3度の開催を経て準備や進行方法も改善していき、コンテンツの見直しも行いながら3か月に1回定期開催できるだけの安定した地盤を作り上げることができたため、よい挑戦になりました。
本記事が「スマホゲームのイベントを開催してみたい!」という人の助けになれば光栄です。また、協力して一緒に開催したい、運営を任せたいなどありましたら是非ご連絡ください!お待ちしています!

