Epic GamesとAppleの対立によって明らかになったプラットフォームの手数料問題は、ライブ配信にも及んでいた。今回はそんな「ライブ配信プラットフォーム」における手数料を探ってみた。
はじめに
「Epic Games」と「Apple」の対立はゲーム業界を揺るがす大問題となっている。この問題の争点は「プラットフォームの手数料」だ。
「Apple」が運営する「App Store」では、アプリの販売者に対して売り上げの30%を手数料として徴収している。この制度に我慢の限界となった「Epic Games」が行動を起こした。
ただ、プラットフォーマーが法外な手数料を取っているのは、アプリストアにおいてだけではない。
非常に勢いがあり、ゲームとも近い関係にある「ライブ配信プラットフォーム」にも及んでいた。
投げ銭
路上ライブの演奏を聞いて、彼らのギターケースなり帽子なりに「気持ち」としてお金を入れるのと同じ感覚で、ライブ配信に対してお金を支援するものである。
スーパーチャット (YouTube)
概要
一度に投げられる金額は、最低100円・最高50,000円である。金額にメッセージを添えることができ、その文字数や表示時間は投げた金額によって変化する。
気になる手数料は!?
一般的には売上の70%がクリエイター、30%が「YouTube側(Google)」だと言われている。
「スーパーチャット」の公式の収益配分情報を見つけることができなかった。一般公開はされていないと思われる。
またこの記事によると、iOS版の「YouTubeアプリ」からのスーパーチャットの手数料は、「App Store」の手数料も徴収されているため割高に設定されているらしい。
ビッツCheering (Twitch)
概要
厳密には配信者に直接お金を支援するのではなく、特定のアニメーションスタンプを購入し、その売り上げの一部が配信者の収入となる。
こんなアニメーション付きのスタンプを添えてメッセージを送ることができる。
そして支援した金額に応じて「バッジ」が獲得できる。
所持できるビッツは最大250,000ビッツ、1日に購入できるビッツは約500,000ビッツに制限されている。
価格は購入場所により大きく異なる
ビッツの価格は「スマホアプリ」と「ブラウザ」でかなり異なる。
- スマホアプリ(iOS):1ビッツ=2.63円
- ブラウザ:1ビッツ=1.65円
スマホアプリで購入する場合の価格には「Twitch」が「App Store」でかかる手数料分を上乗せしているため、かなり割高だ。
手数料
Twitchはビッツの販売で得られた収益から、Cheeringを受け取ったパートナーおよびアフィリエイトに1ビッツあたり1セントを還元します。
Twitch公式
ビッツの価格から配信者への還元率を計算したところ、「ブラウザ版」では「YouTube」よりも「Twitch」方が高いことが分かった。
- スマホアプリ(iOS):還元率 54%
- ブラウザ:還元率 85.5%
※1$=106円、付加価値税25%で計算
上記の計算で考えれば、ブラウザ版の投げ銭に対する「Twitch」の手数料は約15%程だと考えられる。しかし、これで「Twitch」の方がいいと判断するのは早計である。
ファンクラブ (サブスクリプション)
概要
簡単に言えば、月額制のファンクラブのようなものである。会員は限定コンテンツを楽しむことができる。
メンバーシップ (YouTube)
会員特典
- 会員限定の動画、投稿、ライブ配信、チャットを楽しめる。
- 特殊絵文字が使用できる。
- 会員限定のバッジや装飾によって、自身の名前がチャット欄やコメント欄で目立つようになる。
メンバーシップの価格
以前までは490円固定だったこともあり、月額490円が一般的である。現在はこの表の範囲で「値段の変更」や「複数のプランの設置」を行うことができる。
米ドルの料金 | 日本円の料金 |
---|---|
USD $0.99 | JPY ¥90 |
USD $1.99 | JPY ¥190 |
USD $2.99 | JPY $290 |
USD $3.99 | JPY ¥390 |
USD $4.99 | JPY ¥490 |
USD $5.99 | JPY ¥590 |
USD $6.99 | JPY ¥690 |
USD $7.99 | JPY ¥790 |
USD $8.99 | JPY ¥990 |
USD $9.99 | JPY ¥1,190 |
USD $14.99 | JPY ¥1,790 |
USD $19.99 | JPY ¥2,390 |
USD $24.99 | JPY ¥2,990 |
USD $29.99 | JPY ¥3,590 |
USD $34.99 | JPY ¥4,190 |
USD $39.99 | JPY ¥4,790 |
USD $44.99 | JPY ¥5,400 |
USD $49.99 | JPY ¥6,000 |
気になる手数料は!?
Google が認識したメンバーシップ収益の 70% から、地方自治体の売上税やその他の手数料(お住まいの国やユーザーのプラットフォームによって異なります)を差し引いた額がクリエイターに支払われます。現在、支払い手続きに伴う手数料(クレジット カード手数料を含む)は YouTube が負担しています。
https://support.google.com/youtube/answer/6304294?co=GENIE.Platform%3DDesktop&hl=ja&oco=1
クリエイター側が70%、YouTube側(Google)が30%の割合だ。
額面 × 0.7 – 税金 – 手数料(プラットフォームとは別) = 配信者取り分
※「Google」が「App Store」の手数料を嫌ったため、iOSアプリからはメンバーシップ登録ができない。ブラウザ版から登録する必要がある。
サブスクライブ (Twitch)
特典
- 会員限定の動画、ライブ配信、チャットを楽しめる。
- 特殊絵文字が使用できる。
- 会員限定のバッジや装飾によって、自身の名前がチャット欄やコメント欄で目立つようになる。
- 会員となっているチャンネルでは広告なしの視聴が可能。
サブスクライブの料金
$4.99、$9.99、$24.99 の3つのレベルに分かれている。レベルによって使えるスタンプの数や種類が変わる。
日本円では以下のとおりである。
- iOS版:730円 ※$4.99のサブスクライブしかできない。
- ブラウザ版:600円、1200円、2950円
なぜ価格が違うのだろうか?これもビッツと同様に「Twitch」が「App Store」でかかる手数料分を上乗せしているからだ。
手数料
サブスクによる収益をお客様とTwitchとの間で折半する前に、サブスクの全額から税金、支払い手数料、銀行手数料、為替手数料などが差し引かれます。収益が折半された後は、最終的にダッシュボードに表示される支払い額に対して源泉徴収を行います。Twitchは為替レートや手数料に関与しないため、この金額はお住まいの地域や各サブスクライバーの支払い方法によって異なります。
Twitch公式
なんと手数料を「Twitch」が50%も取っていた。実際の還元率は計算式が違うため、「YouTube」と「Twitch」ではどちらが還元率が高いかは判断しづらいが、プラットフォームが多額の手数料をとっていることは間違いない。
(額面 – 税金 – 手数料(プラットフォーム以外)) × 0.5 = 配信者取り分
一説によると、プラットフォーム間の引き抜きが多く発生していた時期では、大物配信者には50%以上の支払いを提示して引き留めていたと言われている。
終わりに
「YouTube」や「Twitch」といったライブ配信プラットフォームと「App Store」や「Google Play」などのアプリ販売プラットフォームの「ダブルプラットフォーム手数料コンボ」によって、配信者達の収益の多くが削られていることが改めて分かったことだろう。
先日世界のスーパーチャットランキングを集計したサイトが注目を浴びたが、上位陣のほとんどが日本の「VTuber」で構成されていることが話題になった。1位は9,000万円以上のスーパーチャットを獲得している。
しかしこれ程多くのお金を稼いでも、税金や手数料を考えると数分の一しか手元には残らない。(それでも一般的な視点で見ればお金持ちではあるが)
このことを考えると、全ての配信者達はライブ配信プラットフォームとは別の収入源を模索する必要があると言える。
今後もプラットフォームの手数料には注目していきたい。