新型コロナウイルスの影響で、テニス、バスケットボール、サッカー、モータースポーツといったスポーツとesportsの距離が近くなった。
そこで今回は、「スポーツとesportsが交わった出来事」をまとめると共に、「今後のスポーツとesportsの関わり」について考察していきたい。
はじめに
今回のコロナ騒動は、一つ、予想だにしない新たな化学反応を生んだ。
それは、スポーツとesportsが接する機会が増えたことだ。
勿論、そこには色々な思惑は存在しているだろう。しかし、両者が新たなエンターテイメントの可能性に辿り着いたことは非常に嬉しい。
また、「esports」へ世間の関心が多少なりとも向いたことは最高だ。
今回は、コロナ騒動の期間に起きた「スポーツとesportsが交わった出来事」をまとめると共に、「今後のスポーツとesportsの関わり」について考察していきたい。
テニス
知名度や規模を考えると最も大きな「スポーツ×esports」の動きがあったのは、間違いなく「テニス」においてだ。
今回は2つの大会に注目した。
Mutua Madrid Open Virtual Pro
大会概要
2020年4月27日~30日にこの大会は行われた。
コロナウイルスの影響で大会が開催できないテニス業界は、選手が自宅からゲームで競う大会を開催した。現役のプロテニスプレイヤー男16名、女16名の計32名が集まった。そうそうたるメンツだ。日本人テニスプレイヤーの錦織圭選手も参戦した。
使用タイトル:Tennis World Tour(テニス ワールドツアー)
大会の様子はこちらから⇩
優勝者はBIG4の一人、Andy Murray(マレー)選手!!!
彼はゲームも上手かった。
STAY AT HOME SLAM
大会概要
2020年5月4日に開催された。
こちらの大会はバラエティー色が強い。各界の著名人とプロテニスプレイヤーがダブルスを組んでマリオテニスに挑むといった大会だ。
出場選手一覧
- 錦織圭(プロテニスプレイヤー)& スティーヴ・アオキ(音楽プロデューサー、DJ)
- 大坂なおみ(プロテニスプレイヤー)& ヘイリー・ビーバー(モデル)
- セレナ・ウイリアムズ(プロテニスプレイヤー)& ジジ・ハディッド(モデル)
- ビーナス・ウイリアムズ(プロテニスプレイヤー)& デアンドレ・ホプキンス(アメリカンフットボール選手)
- マリア・シャラポワ(プロテニスプレイヤー)& カーリー・クロス(モデル)
- マディソン・キーズ(プロテニスプレイヤー)& SEAL(ミュージシャン)
- テイラー・フリッツ(プロテニスプレイヤー)& アディソン・レイ(TikTokインフルエンサー)
- ケビン・アンダーソン(プロテニスプレイヤー)& ライアン・タネヒル(アメリカンフットボール選手)
因みにスティーヴ・アオキ氏は「フォートナイト」でライブを行うなど、他にもゲーム界隈に近いところでも活躍している。
使用タイトル:マリオテニス エース
大会の様子
初戦から錦織圭ペアと大阪なおみペアが対戦するなど試合は大盛り上がり!!
決勝戦までコマを進めた錦織圭ペアは、惜しくもテイラー・フリッツペアに敗北し、準優勝に終わった。
回線問題などに見舞われながらも、いつものテニスとは違った、ゲームならではの展開を楽しめた。
バスケットボール
NBAは以前からesportsに対して非常に関心を寄せている。
そんなNBAもコロナウイルスの影響で試合の開催が困難な状況だ。
NBA 2K プレイヤー・トーナメント
大会概要
2020年4月3日~12日に開催された。
NBAの現役選手16名が集まった。NBA 2K20を使った大会だ。選手たちが最高に楽しそうなのがとてもいい。八村塁選手も参戦している。
出場選手一覧
- Kevin Durant(ブルックリン・ネッツ|96)
- Trae Young(アトランタ・ホークス|90)
- Hassan Whiteside(ポートランド・トレイルブレイザーズ|87)
- Donovan Mitchell(ユタ・ジャズ|87)
- Devin Booker(フェニックス・サンズ|86)
- Andre Drummond(クリーブランド・キャバリアーズ|85)
- Zach LaVine(シカゴ・ブルズ|85)
- Montrezl Harrell(ロサンゼルス・クリッパーズ|85)
- Domantas Sabonis(インディアナ・ペイサーズ|85)
- Deandre Ayton(フェニックス・サンズ|85)
- DeMarcus Cousins(ロサンゼルス・レイカーズ|81)
- Michael Porter Jr.(デンバー・ナゲッツ|81)
- 八村塁(ワシントン・ウィザーズ|79)
- Patrick Beverley(ロサンゼルス・クリッパーズ|78)
- Harrison Barnes(サクラメント・キングス|78)
- Derrick Jones Jr.(マイアミ・ヒート|78)
使用タイトル:NBA 2K20
大会の様子
優勝はDevin Booker選手だ。八村塁選手もクオーターファイナルでDevin Booker選手に惜敗した。ゲームもかなりの実力者だ。
サッカー
日本サッカーにも「スポーツ×esports」の影響が見られた。意外と表では話題にならなかったものもある。
StayAndPlay eFriendlie
大会概要
2020年4月21~25日に開催された。
日本、マレーシア、チャイニーズ・タイペイ、シンガポールの4地域が参加したこの大会は、各国2名(サッカーe代表選手1名、サッカー各国代表 or 現役/レジェンド選手 or 著名人1名)がチームを組んで、「FIFA20」で競うというものだ。
日本からは、Web Nasri選手(eサッカー選手)と岡崎慎司選手(SDウエスカ所属)が参戦した。
大会概要詳細⇩
使用タイトル:FIFA20
大会の様子
大会後に岡崎選手は、esportsには普段やっているゲームとは違う緊張感や難しさがあることを語っている。
TOYO TIRES presents Jリーグ eSports ONLINE~スポーツがいまできること
大会概要
2020年5月2日、9日、16日に開催された。
ガンバ大阪、京都サンガFC、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸といった関西に本拠地を持つ4チームの選手がeFootball ウイニングイレブン 2020を使って競うといったものだ。
大会概要詳細⇩
使用タイトル:eFootball ウイニングイレブン 2020
大会の様子
「ガンバ大阪」が意地を見せ、優勝を飾った。試合も盛り上がった。
モータースポーツ
コロナウイルスの影響でかなり先の大会まで中止or延期になっているモータースポーツ。
しかし、最も「スポーツ×esports」の親和性が高いのはモータースポーツで間違いない。
事実かなり多くの大会やイベントが開催され、どれも盛り上がっている。
今回はその中でも2つピックアップしてみた。
TGR e-Motorsports Fes
大会概要
2020年4月29日開催に開催された。
「モータースポーツの魅力を伝えたい」という熱い思いから始まった初のオンラインイベントだ。実力者揃いの現役プロドライバー達がグランツーリスモSPORTでしのぎを削る。
大会概要詳細⇩
出場選手一覧
- 中嶋一貴
- 小林可夢偉
- 山下健太
- 大嶋和也(スーパーGT 2019年ドライバーズチャンピオン)
- 坪井翔
- 国本雄資
- 関口雄飛
- サッシャ・フェネストラズ
- 平川亮
- ニック・キャシディ(スーパーフォーミュラ2019年チャンピオン)
- 石浦宏明
- 中山雄一
- 宮田莉朋
使用タイトル:グランツーリスモSPORT
大会の様子
残念ながらアーカイブは残っていない。
イベントの模様は以下を⇩
F1 Esports Virtual Grand Prix
大会概要
「中止になったF1大会は全部ゲームでやろう。」と言う最も気合が入った大会だ。既にバーレーン、中国、スペイン、モナコの代わりの大会が開催されている。現役選手、レジェンド選手、eレーシング選手が大会に参加している。
使用タイトル:F1 2019
大会の様子
番組構成、配信環境、試合の面白さ、その全てにおいて抜きん出ている。
また、esports情報サイトのLiquipediaにページが存在している程には注目度が高い。
一番面白いのは、選手個人のページに遷移しようとすると、Wikipediaに遷移することだ。
それほど大物ぞろいなのだ。また、現役選手が強すぎる。
プロスポーツ選手 → esports
また、プロスポーツ選手がesportsに関心を向けていることもある。
プロスポーツ選手が大会開催
「クラッシュ・ロワイヤル」や「PUBG Mobile」など、スマートフォンでもプレイできるタイトルの方が多い傾向にある。
やはり、手軽なのは何よりも武器になるということか。
スポーツとesportsの在り方
今回の様なスポーツとesportsが歩み寄った出来事は、esportsの認知や盛り上がりを加速させる。これ自体は非常に嬉しいことだ。
しかし、懸念点もある。それは主に認知のされ方に関してだ。
esportsはスポーツの繋ぎではない。
今回の事態は主に、リアルスポーツの試合が開催困難な為に起きたことだ。もし通常通りに開催されていたならば、ほぼ確実に起こらなかった。
つまり、現状が「手を取り合っている」と言えると同時に「esportsがリアルスポーツの繋ぎ」であることも事実なのだ。
そして、次の二つの様に認知されることを私は非常に恐れている。
- esportsはリアルスポーツの代打的エンターテイメントであること。
- esportsはリアルスポーツ系のゲームをすること。
我々esports関係者は、界隈を盛り上げることも大切だが、「esports」がスポーツとは違うエンターテイメントであると認識される様に世間を導く必要もある。
スポーツとesports、時には手を取り合うことも大切だが、別々のエンターテイメントであるべきなのだ。
終わりに
そんな存在の定義である「esportsがスポーツであるべきか?」という大切な問題は、またの機会にじっくり触れることにしたい。
それでも今回の「スポーツ×esports」の試みは私的には超面白かった。
かつてないエンターテイメントの形を示したと共に、「esports」の面白さと可能性を広める一端となったからだ。