今回は、ゲーム課金の代名詞とされる「ガチャ課金」を中心に、ゲーム課金がどのように変化しているのかを日本と世界の視点でまとめた。
【YouTube】ガチャ課金の黒歴史!?賭博に発展!?シーズンパスがブーム!?日本と世界の課金の歴史と未来
はじめに
ゲーム内課金によって数万、数十万、時には数百万円という金額がゲームに注がれることは、日本だけでなく世界でも度々問題として取り上げられる。
そんな課金の在り方は近年少しずつ変化している。
日本のガチャ規制
まずは日本で問題となった「ガチャ課金」とその規制に関する変遷を簡単に追っていく。
コンプガチャ規制
消費者庁、つまりは国が動くほどの騒ぎとなり、「ガチャ課金」の問題性が広く知れ渡った「コンプガチャ」について触れていく。
コンプガチャとは?
「コンプガチャ」は、一般的には、「ガチャ」によって、例えば、特定の数種類のアイテム等を全部揃える(「コンプリート」する、又は「コンプ」する)と、オンラインゲーム上で使用することができる別のアイテム等を新たに入手できるという仕組みです。
オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について
「グリー」や「モバゲー」など、ガラケーからスマートフォンへの過渡期のソーシャルゲーム(ソシャゲ)を中心に使用されていたガチャである。最終的に「禁止」となった。
禁止の要因
「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供」は、景品類の最高額や総額にかかわらず、提供自体が禁止されています(懸賞景品制限告示第5項)。
オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について
つまりコンプリートをするためには何度もガチャをしなければならず、非常に射幸性を煽るとして禁止された。
優良誤認と有利誤認の防止
続いて起こった問題は「優良誤認」と「有利誤認」の問題である。簡単にいうと非常に盛った情報でプレイヤーにガチャをさせるように仕向ける行為である。
優良誤認とは
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
消費者庁
「ガチャ」でいえば、排出されるアイテムやキャラクターの性能を実際よりも高く表示する、などが該当する。
有利誤認とは
(1)実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
(2)競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
消費者庁
「ガチャ」でいえば、アイテムやキャラクターの排出される確率を実際よりも高く表示する、などが該当する。
排出率の明記
「優良誤認」や「有利誤認」が問題となったのと同時期にアプリストアはガチャの排出率を明記するように義務付けた。
しかし排出率の表記とだけ言及されているため、「各アイテムやキャラクターごとに確立を表記する」と「レアリティごとに表記する」のどちらにするか企業によって対応が分かれている。
【任意】上限の設定
ストアでの排出率が明記されるようになった後、一部企業は俗に「天井」と呼ばれる上限設定を取り入れた。これは、一定回数ガチャを行えば目当てのものが1つ確定で貰えるという仕組みである。
ただ、天井に到達するには基本的に数万円の課金が必要で、以前よりましになっただけで、そこまで良心的とはいえない。
そして、この仕組みは義務付けられていないため、全てのゲームに搭載されているわけではない。
世界のガチャ規制
世界で「ガチャ」は「ルートボックス」と呼ばれている。そして、このルートボックスは日本の比ではない程に嫌われている。
Star Wars Battlefront II 事件
「Star Wars Battlefront II」というタイトルがきっかけとなり、世界でガチャ課金(ルートボックス)が見直されるようになった。
人気の「Star Wars」シリーズなだけに期待されていたが、蓋を開けてみればゲーム本体が有料であったのにも関わらず、ゲームを有利に進めるためのキャラクター強化には更にルートボックスに課金しなくてはならず、多くのプレイヤーから批判を受けた。
これ以前もルートボックスは存在していたが、この時に課金について考えた多くのプレイヤーが、不確定であり多額をつぎ込む可能性があるルートボックスによる搾取に気づくこととなった。
これを機に、特に欧米ではルートボックスに対して批判的な目が向けられるようになった。
ちなみにこのタイトルのパブリッシャーである「Electronic Arts」は「FIFA」でもルートボックスで問題となっている。それでもまた「Apex Legends」に導入するなど、ルートボックスが大好きな企業でもあるのだ。
オランダとベルギー
この2国は特にルートボックスに厳しい。
2018年には「ルートボックスはギャンブル要素が強く、特に子供達には危険である」として、「CS:GO」「Overwatch」「FIFA 18」に対しルートボックスの削除を命じた。
その結果、多くのゲーム会社はこれらの地域ではルートボックスを無効にする、もしくは撤退を余儀なくされた。撤退した企業には「任天堂」など日本の企業も含まれている。
中国
ガチャの確率表記が義務付けられている。
VIPシステム
課金は、中国独自の「VIPシステム」を導入している。
「VIPシステム」とは、累計課金額に応じてゲーム内で受けられる恩恵(特殊スキン、ステータス上昇、クリアボーナス増加など)が変化するシステムである。
つまり、大量に課金しても損をしないようにする仕組みである。現在では逆に「VIPシステム」の恩恵目当てで課金する者も少なくない。
韓国
ガチャの確率表記が義務付けられている。
その他の国
各国で規制を求める声は挙がっているものの実際に規制された例は少なく、ゲーム会社の自主規制に留まっている。
ガチャをギャンブルとして規制するのが難しい理由は、ガチャによって手に入れられるアイテムはゲーム内でのみしか価値しかなく、金銭価値が少ないからだとされている。
それでも、ガチャが含まれているゲームタイトルの対象年齢を引き上げる動きがある。
スキン賭博
上記のように一般的にゲーム内アイテムは金銭価値がほぼないものとされているが、世界では「スキン賭博」というギャンブルが横行している。特に「CS:GO」の界隈で活発だ。
スキン賭博を簡単に説明すると、ゲーム内のスキンを仮想通貨に見立てた賭け事である。当初は同タイトルのeスポーツの勝敗によって賭けられていたが、近年ではルーレットやコイントスによって行われることもある。
スキン賭博サイトでは年齢確認は特になく、未成年にとって特に危険性が高い。
なお、CS:GOの運営であるValveはこうしたスキン賭博を認めていない。
日本での現在の課金システム
ここでは、日本でゲーム課金が盛んに行われている「スマホゲーム」を中心に現在の日本の課金システムを探る。
人気スマホタイトルと課金対象
日本市場に注目するため、日本で人気の海外タイトルも含むこととする。また、2020年9月7日の「App Store」におけるセールスランキングを参考にしている。
- モンスターストライク / XFLAG
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用)、サブスクリプション(ゲーム内での恩恵を受けられる) - Fate/Grand Order / Aniplex
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - ドラゴンクエストウォーク / SQUARE ENIX
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - 荒野行動 / NetEase
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用)、シーズンパス(ゲーム内で恩恵を受けれれる)、VIPシステム - ドラゴンボールZ ドッカンバトル / BANDAI NAMCO Entertainment
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ / BANDAI NAMCO Entertainment
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - マフィア・シティ-極道風雲 / Yotta Games
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - Pokémon GO / Niantic
課金対象:ゲーム内アイテム(ゲームを進めるためのアイテム購入に使用) - Rise of Kingdoms ―万国覚醒― / Lilith
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用) - マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝 / Aniplex
課金対象:ゲーム内アイテム(ガチャ用)
ガチャで使えるゲーム内アイテムは、スタミナ回復やBox拡張にも使用できる。ただその用途で課金することは無いため「ガチャ用」としている。
特徴
ランキングから分かるように、問題視はされつつも日本ではまだガチャ課金がメジャーといえる。
最近では「モンスターストライク」や「マギアレコード」などで定額の課金システムが導入されはじめているが、このような定額課金の目玉はガチャを引くためのアイテムがお得に貰えることなので、ガチャ課金の延長線上にあるといえる。
この中で異彩を放っているのが「荒野行動」である。「ガチャ課金」の他にも「シーズンパス」や「VIPシステム」など幅広い課金方法がある。ソシャゲの延長線上にあるキャラゲーとは一線を画したゲーム性であることも要因としては考えられる。
なぜガチャ課金は続くのか?
日本の主流なオンラインゲーム市場が携帯電話やスマートフォンであることが原因の1つに考えられる。今でこそ「PUBG mobile」などハイスペックなゲームがスマートフォンに対応しているが、基本的には単純なゲーム性のものが多い。開発側は技術やコストの面で作りやすく、プレイヤー側も手軽さを求めるからだろう。
こうした環境の中ではゲーム性の面白さだけで勝負するのには限界がある。そのため、ゲーム性とは別な要素として能力値や個性の差別化された「キャラクター」を売りにすることに活路を見出した。ただこの場合、プレイスキルよりも強いキャラクターを持っているかがゲームを進めていくうえで重要になってくる。
つまりは「いかにキャラクターを入手できるか」がゲームの面白さに繋がっていくといえる。
そこでガチャではなく、課金すれば確実に手に入れられる仕組みの場合、お金を入れれば簡単に手に入ってしまうので面白さは減ってしまうだろう。こうしたゲームはガチャを含めたゲーム性で成り立っているといえる。ガチャをやめると根本的なゲーム性が崩壊するといえるだろう。
この点だけ見れば、一概に「ガチャ」をやめろともいえないのだ。
ガチャ課金のビジネス的広がり
日本が非常に特殊なのは、海外はスキンや追加コンテンツへの課金が多いのに対して、「キャラクター」の魅力に課金していることが多いことだ。
上記のランキングでも分かるように、オンラインゲームといえど、日本人の多くは「対人対戦系」ではなく、1人でNPC戦を繰り返すゲームを好む傾向がある。このゲーム性により、ゲームが進むごとにキャラクターの魅力も深まっていくため、プレイヤーの関心がキャラクターに向きやすくなっている。
こうした「キャラクター」へ課金はビジネスとしての広がりがある。勝つための課金はゲーム内で完結するのに対して、キャラクターに対する課金はキャラクターに向けられているため、グッズや登場作品などに関心が派生する可能性が高く、新たなビジネスにつながりやすい。
つまり、このようなビジネスの代表格である「キャラクタービジネス」や「IPビジネス」と非常に相性がいいのだ。逆にIPを豊富に持っているからキャラクター重視のゲームを作るということもある(むしろ、こっちの発想の方が多い気もするが・・・)。相互に広がっているのだ。
このことは、IPビジネスに力を入れている「BANDAI NAMCO Entertainment」や「Aniplex」がパブリッシャーとなっているタイトルが多くランクインしていることからも分かるだろう。
ガチャ課金の前提となる「キャラクター」は、ガチャ課金の直接的な収益とは別で利益を生む可能性があるので、運営会社はガチャから手を引きたがらないといえる。
世界の現在の課金システム
世界的に人気なオンラインゲームをいくつかピックアップして、課金システムについて探る。
人気オンラインゲーム
- League of Legends (スキン購入、シーズンパス、キャラクターのアンロック)
- Fortnite (スキン購入、シーズンパス)
- VALORANT (スキン購入、シーズンパス、キャラクターのアンロック)
- Apex Legends (スキンガチャ、スキン購入、シーズンパス、キャラクターのアンロック)
- Call of Duty : Modern Warfare (スキン購入、シーズンパス、武器購入)
「シーズンパス」とは、一定期間中に購入者限定の特典を手に入れられるものである。
特徴
海外の人気オンラインゲームは、ルートボックスを避ける傾向にある。そのため、確実に目当ての物が手に入る「ゲーム内通貨を使った直接購入」や「シーズンパス」が好まれている。
またほとんどの場合において、課金額が直接的な強さに関係することは少ない。多くはスキンやエモートなどプレイヤーが個性を出すための「キャラクターの見た目」に課金されている。
ただ完全に健全かといわれれば微妙である。ガチャと違ってギャンブル性の心配はないが、「豊富なスキン」や「何度も更新されるシーズンパス」のように少額の課金をさせる機会が多いからだ。そして少額ゆえに課金への抵抗感が薄れる可能性も高い。累計金額で考えてみれば、意外と多くのお金を使っていることに気づくだろう。下手したらガチャ課金のゲームとトントンなんてこともあるかもしれない。
これからの課金はどうなる!?
日本は「ガチャ課金」、世界は「多種多様な少額課金」にはっきり分かれるだろう。
日本
「ガチャ」自体がゲーム性に組み込まれているので、細かな調整はあっても「ガチャ課金」が無くなることはないだろう。スマートフォンでも本格的にゲームができるようになれば、こういったタイトルも廃れていく可能性もある。ただ、前述したようにビジネスとしても広がりを持っているため、運営側も簡単に手放さないように思える。
世界
ガチャ課金に対して良い印象を持っていないため、もう一度ガチャがゲーム性に大きく影響するタイトルは展開しにくい。これは「Apex Legends」以降、スキンやエモートなど強さに反映されない部分でもガチャが使われない点からも明らかだ。
また世界的なeスポーツの人気の影響もあってか、オンラインゲームの主流はプレイスキルを競うものとなっているので、課金要素は強さに影響しない部分だけとなるだろう。「スキン購入」や「シーズンパス」など多種多様な少額課金が今よりも更にスタンダートなものになってくると思われる。
終わりに
ガチャ課金一強の時代は終わった。
これからはゲーム性とプレイヤーの声に合わせた柔軟な課金が求められるようになるだろう。