「esports」や「ストリーマー」など「ゲーム」に関するエンターテイメントの健康面が心配されている。
そんな現状を打開する為にも、長時間のゲームプレイが引き起こし得る「ケガ(怪我)」や「病気」の特徴、原因、予防法を特集していく。
はじめに
前回の記事で、esportsが如何に過酷であるかを紹介した。
彼らの練習時間は、平均8~9時間のチーム練習とウォーミングアップを含めた数時間の自主練習という例が多い。中には一日12~14時間という例もある。
確かに、これ程の長時間のゲームプレイは多くの不調を引き起こすこと間違いない。
だが、ゲームプレイが「esports」や「ストリーマー」などの職業を生み出した今、ただ危険という理由で排除するのは違うと思う。
だから、我々はどの様なリスクがあるかを知り、どの様に予防・対策するかを見出す必要がある。
そこで今回は、長時間のゲームプレイが引き起こし得る「ケガ」や「病気」の特徴、原因、予防策を特集する。
一般的な怪我と病気 その主な原因
一般的に多くのゲーマーは、「手」、「手首」、「背中と首」、「眼」4つの不調を経験している。
これらの原因は大きく分けて3つだ。
- 長時間のキーボート&マウスの操作
- 姿勢の悪さ
- その他
多く不調は、特に「長時間のキーボート&マウスの操作」と「姿勢の悪さ」が引き起こしている。
次の章では、原因ごとに引き起こされ得る「ケガ」や「病気」の詳細を紹介していく。中には、大事になる可能性があるものも・・・
「長時間のキーボート&マウスの操作」が引き起こす不調
手根管症候群
主にPCゲーマーに良く起こるモノである。
上の図の様に正中神経が圧迫されることで、発症する。
「キーの入力」や「マウスの操作」などの単調な反復動作、キーボードやマウスを使用する時に手の置き場所が悪い(基本的に若干手首や手をひねった状態を長時間維持している)と引き起こしやすい。
症状としては親指、人差し指、中指が痺れたり、ピリピリした痛みを感じる。ひどい場合だと感覚が徐々に消えていく。
Gamer’s thumb
主にコンソールのゲーマーによく起こる。
親指スティックを過剰に操作することで起きる腱鞘炎の一種である。
症状としては、手首の親指側から親指の付け根あたりまで痛む。
マウス肘(テニス肘)
PCゲーマーが最も陥る怪我である。選手生命を脅かされる例も多々ある。
キーボード操作やマウス操作など、筋肉の状態が曲げられた状態が長時間続くことで発症する。(肘の腱の繊維が乱れる。)
症状としては、手首の動きや握る行為を行う時に肘の外側の部分が痛む。
マウス肩
基本的にはマウス肘を同じメカニズムで発症するが、マウス肩の場合は上腕二頭筋腱の繊維の乱れで起きる。
それ故に肩が痛む。
症状としては、腕の前後の動きをすると、肩の前部や上腕に痛みがはしる。
原因としては、マウス肘の条件に加え、机と椅子の高さが適切でないことが挙げられる。
キュービタルトンネル症候群
こちらはコンソールゲーマーに起こり得るモノだ。
コントローラーを持つときの肘を曲げた状態が長時間続くことによって、肘の神経の一部が圧迫されることで起きる。
症状としては、薬指、小指、手の小指側が痺れるか、ピリピリした痛みが続く。
内側上顆症
こちらもコンソールゲーマーがよくなるとされているモノだ。
マウス肘と仕組みとして少し似ている。コントローラーを持つ時の手首を曲げる状態が続くことで引き起こされる。(キーボードやマウス操作とは、また違った曲げ方なのでマウス肘とは別の腱の繊維が乱れる。)
症状としては、手首を動かした時や握る動作をした時に痛みを感じる。
予防
ゲーム開始前とゲーム終了後の軽いストレッチが効果的。
手間をかけずに負傷のリスクを軽減できるので、非常に便利だ。
「姿勢の悪さ」が引き起こす不調
胸郭出口症候群
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。
画面に向き合う時の猫背の様な上半身と首の前傾姿勢が、上の図の様に血管と神経が過度に触れることで発症する。
症状としては腕が痺れたり、ピリピリした痛みを感じることに始まり、腕に疲労感を感じることや冷たく感じる様になる。
上部交差症候群
PCとコンソールの両方のゲーマーにかなり良く起こり得るモノである。
画面に向き合う時の猫背の様な上半身と首の前傾姿勢が原因となっていて、この状態が長時間続くと筋肉の収縮が固定され発症する。
症状としては、一部の筋肉が衰え(上の図の青色の部分)、また一部は柔軟性が衰える。(上の図の赤色の部分)日常の姿勢も悪くなる。
下交差症候群
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。
上部交差症候群の下半身版である。長時間の座ったままでいることや姿勢が悪いことで発症する。
症状としては、一部の筋肉が衰え(上の図の青色の部分)、また一部は柔軟性が衰える。(上の図の赤色の部分)日常の姿勢も悪くなる。
仙腸関節の機能不全
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。この部分の不調はかなり広い範囲に影響を及ぼす。
長時間座っていることや前傾姿勢によって、上の図の仙腸関節に機能不全を引き起こす。
症状としては、近辺の筋肉を動かした際(体制を変える時など)に掴まれたような痛みを感じる。更に、脊髄の周辺でも異常が出る。
坐骨神経痛
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。
長時間座っていることによる梨状筋の坐骨神経圧迫や変な態勢で座っていること(足を組むなど)による臀部や太腿の坐骨神経圧迫で生じる。
症状は内側を除いた足の大部分で出る可能性がある。しびれやピリピリした痛みから始まり、鋭い痛みや熱を持つように感じる。
緊張型頭痛
ゲーマーが悩ませられる不調の一つである。
頭痛は、他の部分の異常が原因で起こっている。それは、姿勢の悪さを長時間維持することによる筋肉の緊張状態であったり(うつ伏せで寝る時にもなりやすい)、睡眠不足、眼精疲労、ストレス、疲労感などである。
症状は、鈍い痛み、巻き付くような圧迫感がある痛みを頭に感じる。温めるとよくなる。水分補給が非常に重要。
深部静脈血栓症
一番シャレにならないのがこれだ。
長時間座ったままの態勢が足に血栓を作ってしまい、血液の流れが停滞してしまう。それだけでも十分危険だが、血栓が血管を巡り重要臓器に詰まった場合、命の危機に陥る。血栓が肺動脈で詰まった場合は「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」を発症することになる。
症状としては、足や足首が腫れる、もしくは青白く変色する。
予防
- 長時間座っている状況を避けるために、1ゲーム毎に席を立ち、手足を動かすストレッチを心掛ける。スクワットなども効果的。
- 座っている時も極力正しい姿勢を意識する。(猫背や前傾姿勢を極力直す。)
- 背中や肩の筋トレを行うことで、姿勢を矯正する。
- 水分を摂る。
その他
眼精疲労
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。
小さい画面の中で、瞬時に視点を切り替える動作とモニターとの距離が近くなってしまうことが目に過剰な負担をかけることで発症する。
症状としては、眼の周辺や頭に痛みがはしる、ドライアイになる、視界がぼやけたり、ダブったりする。光に過敏に反応してしまって眠れなくなる。
予防
- 眼を閉じた状態を3秒間維持し、開く。を5セット行う。(こまめに行う。)
- 1ゲーム毎に遠い物に焦点を当てる。(外の物を見る様にするとなおよし)
- 適度な睡眠
- 眼のエクササイズ⇩
片頭痛
PCとコンソールの両方のゲーマーに起こり得るモノである。だが、実際のところそのメカニズムの完全な解明には至っていない。
現在有力であるとされる考え方では、アレルゲン、食品中の特定の成分、身体的または心理的ストレス、気象パターン、睡眠不足が原因とされている。
症状としては、3つのフェーズに分かれている。第一フェーズでは、頭痛と共に視界の中心が光って見える。第二フェーズでは、頭の片側だけに起きる頭痛、物忘れ、吐き気、不安定さ、光や音に過敏になる。第三フェーズでは、二日酔いの様な頭痛を感じる。
予防
- 整体などに行き、体のバランスを整える。
- カフェイン(成人では200〜400mg)を毎日摂取する様に心掛ける。
- 頭痛持ちなら頭痛科に行く。(予防薬を処方してもらう)
自然気胸
意外とesportsプレイヤーが苦しんでいる問題の一つだ。
不規則な生活と栄養が取れていないことで、肺に小さな穴が空くことがある。人それぞれで重軽症かは変わってくる。また、一説ではesportsプレイヤーの不規則な呼吸のリズム(例:fpsで射撃の時のリコイル制御などで呼吸を止めたりする行為)が原因であるとも言われている。
予防
- 不摂生を控え、栄養のある食事を心掛ける。
- 喫煙は控える。
- 適度に休憩を挟む。
終わりに
ゲームビジネスの今後
長時間のゲームプレイが引き起こす可能性がある「不調」はその想像よりも遥かに多かった。
だが、新興の文化であるesportsの整備はまだ整っていない。
ゲームを始め、「esports」や「ストリーマー」が健全なエンターテイメントであると周知させるには、「健康問題」に積極的に改善していく必要がある。
そうすることがesportsの「陰」のイメージの払拭にも繋がるのではないか?
「ゲーム」だけではない!!
また今回の「健康問題」の特徴は、ゲームだけに当てはまるモノではない。デスクワークにも大いに当てはまる。
対岸の火事の様な認識ではなく、画面に向き合っている者は等しく注意しなくてはならない問題なのだ。
参考サイト
⇩非常に為になる。機会があれば読んで欲しい。