配信技研が公開している2020年12月のデータをもとに、日本のライブ配信市場の現状と特徴に触れ、最後に今後の予測を立ててみた。
2020年11月 ゲームのライブ配信市場動向
情報ソース
・ランキングの指標は、平均同時接続数ではなく総再生時間。
・ゲーム以外の配信時間は含まれない。
12月ランキング
タイトル
- Apex Legends
- Minecraft
- マリオカート8 デラックス
- Among Us
- フォートナイト
- 桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜
- Dead by Daylight
- グランブルーファンタジー
- Cyberpunk 2077
- IdentityV 第五人格
- 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
- Escape from Tarkov
- PlayerUnknown’s Battlegrounds
- VALORANT
- Shadowverse
- モンスターストライク
- 原神
- ストリートファイターV
- 7 Days to Die
- スプラトゥーン2
配信者
- fps_shaka
- jun channel
- rtainjapan
- stylishnoob4
- pekora ch. 兎田ぺこら
- kuzuha channel
- グランブルーファンタジー公式チャンネル
- aqua ch. 湊あくあ
- 渋谷ハル
- kanae channel
- 兄者弟者
- miko ch. さくらみこ
- にじさんじ
- 勇気ちひろ
- spygea
- kato_junichi0817
- marine ch. 宝鐘マリン
- korone ch. 戌神ころね
- kinako
- botan ch.獅白ぼたん
タイトル分析
eスポーツタイトル
10月 | 11月 | 12月 | |
Apex Legends | 1,162,942,920 | 1,423,768,150 | 1,273,012,400 |
フォートナイト | 200,155,260 | 166,127,140 | 174,066,360 |
VALORANT | 149,391,570 | 83,441,810 | 70,920,240 |
Shadowverse | 157,472,200 | 211,100,300 | 70,906,110 |
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS | 73,272,040 | 83,654,170 | 79,100,270 |
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL | 146,957,490 | 96,187,080 | 103,361,280 |
identityV第五人格 | 146,937,080 | 121,618,640 | 109,059,110 |
常連であったLeague of Legendsが初のランク外になるなど、軒並みeスポーツタイトルのランクや視聴時間が減少している。
オフシーズンで見える視聴者層
この要因として考えられるのは、11月~12月の期間が多くの世界的eスポーツタイトルにとってオフシーズンになっているからだ。League of LegendsやPUBGがこれに該当している。VALORANTも12月初頭以降はオフシーズンであった。この時期は、いかに準公式や非公式の大会を盛り上げることができるかが重要だ。
またオフシーズンの視聴時間の増減から、視聴時間に占めるeスポーツ大会の割合や公式や準公式・非公式のパワーバランスを見ることができる。
League of Legendsの場合
例えば、League of Legendsなどはeスポーツ大会のライブ配信の中でもトップの人気がある。しかし、完全にオフシーズンである12月はランク外にまで落ちてしまった。このことから視聴時間に占めるeスポーツ大会の割合が配信者のライブ配信よりも多いことが分かる。また、この期間に準公式や非公式の大会も特に目立ったわけではないので、公式の力が圧倒的に強いことも分かる。
PUBGの場合
同じく大会のライブ配信が視聴時間の大部分を占めるPUBGは、オフシーズンに入ったことで視聴時間は減少しているものの最小限に留めている。その背景には準公式の大会であるPWIや高頻度で開催されたスクリムがある。このことから公式だけでなく準公式や非公式の大会やイベントが貢献していることが分かる。
Apex Legends や Fortniteの場合
またApex LegendsやFortniteはeスポーツのシーズンによって変化はあまりしない。実際、Apex Legendsに関しては12月にAPACの大会があったのにも関わらず視聴時間は減少しており、一方Fortniteは大きな大会があったわけでもないのに上昇している。eスポーツ以外の要素が視聴時間を伸ばしているわけで、eスポーツの側面がLoLやPUBGよりも弱いといえる。
そしてApex LegendsとFortniteに共通しているのは、多くの視聴者を集めているのは公式の大会ではなく個々のストリーマーである点だ。その結果、時期に関係なく高水準を維持できている。だが視聴時間が上位のストリーマーは固定化されてきている。下位のストリーマーは視聴時間を維持することが難しく、また新規参入も難しい。
海外タイトルと日本タイトルの割合
オープンワールド / パーティーゲーム / オンライン対戦
ここ数ヶ月で視聴者を多く集め高頻度でライブ配信されるタイトルは、オープンワールド、パーティーゲーム、オンライン対戦の3つに集中するようになった。12月に至っては20タイトル中17タイトルがこれらに該当している。
その理由として、オープンワールド、パーティーゲーム、オンライン対戦には以下の2つの特性があるためだと考えている。
・プレイごとに結末が異なり、視聴者がライブ感を味わえる
・配信者自身が選択できる要素が多く、配信者の特徴が出やすい
ストーリーベースはなぜ人気が出ないのか?
2020年初期には一定数の割合で存在していたストーリーベースのタイトルが、今はCyberpunk 2077のみになってしまったのだろうか。
ストーリーに沿ってゲームが進行するため、ライブ感が無く配信者の特徴も出ないことが要因の1つだ。
そしてもう1つの要因が、ストーリーベースのタイトルはライブ配信より動画配信に向いていることだ。実際、動画配信では再生数が伸びている。
どんなゲームでもレベル上げやサブクエストをこなす必要があるので、メインストーリーがなかなか進まないことがある。動画配信では余計な部分を編集することでテンポよく進められるが、ライブ配信ではカットできないため間延びしてしまうのだ。
ゲームのストーリー目当ての視聴者が、ライブ配信ではなく動画配信を選ぶのも無理はない。
配信者の分析
11月 | 12月 | |
VTuber | 12アカウント | 11アカウント |
プロゲーマー | 3アカウント | 3アカウント |
芸能人 | 0アカウント | 0アカウント |
ゲーム会社・公式 | 0アカウント | 2アカウント |
その他(ゲーム実況者) | 5アカウント | 4アカウント |
ほとんど11月と変わっていない。年末はモバイルゲームの公式アカウントが大規模なイベント告知をするためいくつか企業アカウントが含まれるものの、相変わらずVTuberが強い。そしてTwitchのストリーマーの配信時間が異常すぎる。
RTAの存在感
RTAとはReal Time Attackの略で、ゲームを最初から最後までクリアするまでのタイムを競うモノである。
⇩でアーカイブが見られる
12月27日~31日まで開催されたRTA in Japan 2020や1月3日~10日に開催されたAwesome Games Done Quickの影響で全世界的にRTAが注目されていた。Twitchではどのタイトルでも平均的に5万人以上の同時接続数が確認できた。実際見てみると自分がプレイしていないタイトルでも、その素早さと鮮やかさには引き込まれるものがある。プレイしたことがあるものだと尚更凄さを感じられ、またかなり昔にプレイしたタイトルなどは懐かしさも感じられるので見ごたえがある。これらの要素が多くの人を集めた結果に繋がったのだと考えられる。
ゲームを使った「技」という側面ではeスポーツが注目されがちだけど、RTAの認知も高まるといいな。
ストリーマー大会が最強兵器
Apex Legendsで頻繁に開かれているストリーマー大会が各方面に多くの利益をもたらしている。
全世界的にストリーマーの影響力が高まっている今、そんな彼らを集めて大会を開くメソッドは非常に多くの人を集めるコンテンツになってきている。そのメリットは参加者が持つ視聴者数の合計による大会本配信枠の莫大な同時接続だけではない。特にApex Legendsなどのチーム戦では、チームメンバー間の視聴者の流入によって新たな視聴者層の獲得が見込め、他者との絡みが配信のアクセントにもなり得るのだ。そして大会というゴールに向かうストーリーがあることで、普段の練習配信の視聴者数も上昇する傾向がある。
そして多くの人に一定期間遊ばれ、視聴されることでゲームタイトルにも活気が生まれていく。大会開催者、参加するストリーマー、ゲームタイトルの3つを潤すことができるのだ。だからこそ、大会メソッドは現状最強な手段なのである。しかし、主催者のコネが重要になってくるので、誰でもできるほど甘くはない。
Apex Legendsだけでなく、今度はTom Clancy’s Rainbow Six Siegeでも開催される予定だ。この影響でどこまでシージが活気を取り戻せるのかは楽しみである。
今後の予測
筆者注目タイトル
日本の配信市場は、現状のところ均衡を揺るがすほどの人気タイトルは登場していない。
Escape from Tarkov
Escape from Tarkovがアップデートによって以前よりは多くの人を集めているが、PCのみの対応である点とTwitchでのみ流行っているなどを考慮すると日本ではあまり伸びない様に感じる。世界ではトップに躍り出る程の人気である。
RUST
またRUSTもトップストリーマーがこぞってプレイしたことによって、世界では現在Twitchのトップタイトルになっている。その影響でSteamの売り上げも連日1位だ。ただこれも日本で流行るかと言えば、正直微妙である。
Hitman 3 & LITTLE NIGHTMARES II
新規タイトルでは以前から記載している様に、2021年1月20日発売のHitman 3や2021年2月10日発売のLITTLE NIGHTMARES IIなどが盛り上がると予想される。ただ、共にストーリーベースの作品なので人気の期間は短いと思われる。
個人的には大穴でPUBGの復興を期待している。ベースの視聴時間が多い点とカスタムマッチが比較的開きやすい点を考慮すると意外とあるかもしれない。